マルグリット・デュラスというフランスを代表する作家がいる。この作家の小説の中で繰り返し繰り返し出てくるのは彼女が幼年時代を送ったコーチシナの憧憬である。
彼女の代表作であり問題作である『ラ・マン(愛人)』でも、舞台はコーチシナだった。
マルグリット・デュラスはフランス人だが、生まれも育ちもコーチシナで、アジアの豊饒なメコンデルタこそ彼女の故郷であると言っていい。
彼女の家族は、貧しさの中で白人社会からほとんど排除されかかっていた。
払い下げ分譲地を買い取ったものの、その土地はまったく使い物にならない土地であった。
これによって、一家がさらに救いようのない窮乏に落ちてしまったことが、『ラ・マン(愛人)』では余すことなく描かれている。そして、彼女はサイゴンで金持ちの中国人の愛人となっていた。
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