シンガポールのコー。虫が這い回る部屋に潜んで生きる

シンガポールのコー。虫が這い回る部屋に潜んで生きる

貧しさに困窮して海外に目を向けるタイの女性たちがいる。あるタイ女性はスイスへ向かい、ある女性は中東へ向かう。ドバイへ行く娘もいれば、シンガポールを目指す娘もいる。自国よりも稼げるところであれば、娘たちはどこにでも出ていく覚悟がある。

日本で売春をしているタイの女性たちもかつては珍しくなかった。彼女たちは東京・神奈川・大阪に身を潜めて夜の街に立ち、自分に声をかけてくれる男たちをひたすら待つ。

初冬の冷たい風が吹きすさぶ寒い夜にも、熱帯の娘たちがコートの襟を立てて道ばたに立っていた。彼女たちに冬は似合わない。両手をポケットに突っ込んでこちらを見る彼女たちの表情にいつも哀れを感じたものだった。

彼女たちの中には子供がいる女性も多い。売春ビジネスが終わったあと、彼女たちは気を許して子供の写真を見せてくれることもある。慈愛に満ちた眼差しで写真をしげしげと眺めては「さびしいよ」と日本語でつぶやく。そんなときの女性はプロの女ではなく、母親としての顔しかない。

彼女たちはタイに子供を残して金を稼ぎにやってくる。

何度も日本にやってきて日本の入国管理局にマークされているタイ女性は偽造パスポートを使う。偽造パスポートはマフィアが経営する「旅行会社」が扱っている。

旅行会社とは言ってもそれは表向きの看板で、実際は偽造パスポートと密航が主な収入源になっており、警察とも癒着して汚職の温床になっている。

どこかに密入国したい女性はここで偽造パスポートを買ったり密入国の依頼をしている。以前バンコク・チャロンクルン通り(ニューロード)にある旅行会社でマフィアの構成員による暴力事件が起きたことがある。

その事件のせいで、はからずもこの旅行会社が偽造パスポートと密入国を扱った旅行会社であることがバレた。タイにはこのような偽造パスポートと密航を扱った旅行会社が数多く存在し、密入国したいタイ女性ばかりか、他国から逃亡している犯罪者やマフィア、そして……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア』。本編に収録できなかった「はぐれコンテンツ」を掲載。電子書籍にて全文をお読み下さい)

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『ブラックアジア外伝1 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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