ヨーロッパの敬虔なキリスト教徒が何かプレッシャーがかかったとき、十字を切るしぐさをよく行う。
東南アジアの人々が祈るときは、無意識に合掌(ワイ)をして目を閉じる。イスラム教徒は天を仰いで神を呼び込むしぐさをする。信じられているものが、ジェスチャーとなって現れる。
インド圏は神々が大地を覆っている。人々は全員それを信じているので、共有された「神」という概念が人々から人々へと移り渡り、本当に神がいるかのように見えることもある。
だから、インドの人々は多くの「おまじない」のジェスチャーを持っている。インド・コルカタの売春地帯の奥の奥に隠されていた美しい女性、ジョーティもそうだった。
猛烈に美しいこの女性は、最初に必ず「おまじない」をした。彼女とふたりきりになってベッドに上がる。裸になってベッドに横たわると、彼女は鼻歌を歌うように、
「ン・ンッ。ン・ンッ。ン・ンッ……」
と言いながら、右目を触ってきて、自分の右目を触る。左目を触ってきて、自分の左目を触る。鼻を触ってきて、自分の鼻を触る。口を触ってきて、自分の口を触る。
そして、何かヒンドゥー語でおまじないの言葉を言って、それから売春ビジネスに入るのである。
最初はそれをふざけてやっているのだと思っていた。そうではなかった。二度目に彼女と会ったときも、三度目に会ったときも、彼女は必ずそうした。
ふざけているのではなく、ジョーティは真剣にそのおまじないをしていたのだった。彼女にとって……
(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア インド・バングラデシュ編』にて、全文をお読み下さい)
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