2012年8月23日、渡部由香理という日本女性が、関西国際空港に覚醒剤を1.8キロを「密輸」したとして逮捕されている。

彼女は24歳の東京外国語大に在籍する女性で、スーツケースの中に覚醒剤を隠し持っていた。コーヒー豆5袋にそれは隠されていたのだという。

彼女はアフリカのウガンダからカタール航空に乗り、カタール・ドーハ経由で関西空港に入っている。

末端価格で1億5000万円相当。大阪地検が覚醒剤取締法違反で彼女を起訴しており、彼女は社会に出る前に、刑務所に放り込まれる可能性がある。


典型的な、「ドラッグ・ミュール」事件


「旅費と荷物を運ぶアルバイト代として知人から8万円をもらう予定だった。中身が覚せい剤とは知らなかった」

渡部由香理はそのように話しており、意図的に覚醒剤を持ち運んでいたことについては本人は否認している。

しかし、覚醒剤を運搬している人間はみんな逮捕されたら彼女とまったく同じことを言う。

「荷物の中身は知らなかった」

しかし、この情報化時代に、海外から日本に荷物運びをさせられて報酬がもらえるというのは、ドラッグだと頭が働かないほうがどうかしている。

実は、まったく同じ事件が2009年10月に起きていた。マレーシアで逮捕された竹内真理子の覚醒剤運搬逮捕事件である。手口も逮捕時の言い訳もまったく同じだ。

渡部由香理のやったことは、典型的な、「ドラッグ・ミュール」事件である。

ドラッグ・ミュールとは何か。これはドラッグ・マフィアが使っている言葉で、簡単に言うと「麻薬の運び人」のことだ。

麻薬を先進国に密輸するとき、もっとも危険なのは空港の入国審査や税関の部分である。だから、麻薬組織はこの部分を組織とはまったく関係ない素人の人間を使う。

運び人が逮捕されなければ麻薬を引き取るし、逮捕されれば連絡を絶ち切ってトカゲのしっぽ切りをする。そうやって組織全体に影響が及ばないようにシステム化している。

ドラッグ・ミュール(運び人)は、ドラッグ・ビジネスの中で一番ワリに合わない部分であり、だからカネで釣られる人間をそこにはめ込むのである。

渡部由香理は使い捨てだ。彼女は失敗したのだから、もう組織は彼女とは一切の連絡を取らない。あとは、彼女自身が自分の人生の中で、それを清算しなければならない。



国外に出た日本人が世間知らずであれば人生が終わる


アフリカに行って、「旅費とアルバイト料を出すからコーヒー豆を運んでくれ」と言われたら、あなたは「これは、何かおかしい」と思わないだろうか。普通は思う。

しかし、女子大生はそう思わないのだろうか。こうやって利用されているのだから、もしかしたら渡部由香理はそう思わなかったのかもしれない。

そのあたりは大阪地検がこれから明らかにしてくれるはずだから、結果を待つしかない。

しかし、もし本当に知らなかったのであれば、彼女はとんでもない「世間知らず」だと言っても過言ではない。

ルーマニアで声をかけられてタクシーに乗り込んでレイプされた益野友利香という女子大生は現地の新聞にこのように書かれていた。

「被害者女性は英語を学んでいるということだったが、常識は学んでいなかったのではないか」(益野友利香。ルーマニアでレイプされて殺された20歳の女性

これは、もし本当に麻薬だと知らなかったというのであれば、渡部由香理に言うべき言葉なのかもしれない。

麻薬の運搬で逮捕されたら、実は事前に事情を知っていても逮捕された本人は100%「知らなかった」と最後の最後まで言い張る。これは当然だ。

「いや、実は麻薬かもしれないと思ってはいたのですが、アルバイト料がもらえるので、やってしまいました」などと言うと、ますます罪が重くなる。

だから、誰でも絶対に「私は何も知らなかった」と必死になって言うのである。渡部由香理もまたそのように必死になって言っているようだ。

しかし、有罪は免れないだろう。彼女の人生は、もう終わったも同然だ。

日本で世間知らずでも大して問題にならないが、国外に出た日本人が世間知らずであれば人生が終わる。

渡部由香理のやったことは、反面教師として、いい題材になるのではないだろうか。


ドラッグ・ミュールの「ミュール」とはロバのことだ。もちろん運搬する動物だからそう言われているのだが、国外ではロバは「愚鈍」「馬鹿」という隠語もある。麻薬組織にとっては「麻薬を運ぶ馬鹿」というニュアンスでも使っているのだろう。


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