バングラデシュ編
バングラデシュの首都ダッカから20キロほど南東に下ったところに、ナラヤンゴンジというよく発展した郊外都市がある。
ドレッショリー川とシトロッカ川の交差する地点にあるこの街は200年以上も前から港町として栄えていた。
どこの国でも、港町の近くには必ず売春地帯がある。ナラヤンゴンジもご多分に漏れず、早くから船員相手の売春地帯がタンバザールとニムトリ地区に生まれていた。
そのビジネスは営々と続けられて膨張し、ついにバングラデシュ最大の売春地帯としてその名を馳せるようになった。
ここで生まれ、育ち、売春女性となり、歳を取れば姉御として若い売春女性たちを束ねる身分となり、死んでいく……。
売春地帯という狭い地域の中で一生を終えていく女性がここには大勢いたことが記録されている。
それは、彼女たちが売春女性として生きることを、裏では暗黙のうちに許可されていたことを意味していた。長い間、そうだった。