バングラデシュ編
バングラデシュの売春地帯「ファリドプル」の奥に、ひとりの女が立っていた。

クリーム色のパンジャビー・ドレスを着てグレーの模様の入った布を肩にかけ、人を避けるようにして立つ彼女の姿は、妙に薄気味悪い雰囲気を漂わせていた。

歳は20歳を過ぎたくらいだろうか。異様に痩せていて、私を見つめる目は無関心に近かった。

ただ黙って立って、売春地帯を行き来する男たちを見つめているのだが、心はどこか他にある、いや心というものは、すでになくなってしまったかもしれない……そんな風に感じさせる女性だった。

誰も彼女に話しかけないし、彼女も誰とも話そうともしなかった。精神的に壊れてしまった人だと思った。

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