タイ編
最近、無理して街を歩いても疲れるので、すぐにどこか座れる場所や店を探して、ほっと一息ついて何か飲み物を頼んで目を閉じている。

この日もそうだったが、飲み物が来るまで目を閉じていると、不意に聞き覚えのあるメロディーが店にかかった。ずっと昔、好きだったアメリカの古い曲だった。

本当に優しいメロディーの歌で、若い頃はそれほど好きだというほどでもなかったはずだったのだが、これを聞いた瞬間に聞き惚れて、もうすっかり過ぎ去ってしまった若い頃を想い出して、涙が溢れそうになった。

そんな曲があったことさえもずっと忘れていたのに、メロディを聞いたらすべてを想い出した。

若い頃は、たくさんの音楽をコレクションしていた。

しかし、引っ越すたびに想い出を断ち切るように捨てていき、どうしても聞き直したい曲はまた買い集め、また失い、そして忘れてしまう。

......