インドネシアで、イナという女性と出会ったことがある。(不気味なインドネシア・モロ島と、打ち捨てられた村の女性

彼女と知り合ったとき、年齢を聞いたら21歳だと言った。

しかし、イナは子供がふたりいた。その子供を親に預けて売春地帯で働いていたのだった。

その彼女には、両腕の手首のところにタトゥーが入っていた。絵ではなく、字が書いてある。何を意味しているのかを聞いたら、彼女は「右手にはお父さんの名前を、左手にはお母さんの名前を入れたの」と答えた。

「どうして?」と聞くと、彼女はこのように言った。

「故郷を出たとき、もう戻れないかもしれないと思って、怖くてずっと泣いていたの。だから、お父さんとお母さんを忘れないために、これを入れたのよ」

ほんの些細なことだったが、そんなことを私は忘れないでいる。もし忘れても、それを記した古いノートを読み返して、イナのつぶやきを思い出す。

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