シンガポール人の愛人・現地妻・妾として生きている女性が、インドネシアにはいる。そういった女性の哀しい人生を、知ってしまったこともある。
荒んだ売春宿の中で生活していた華奢な女性で、私はとても彼女のことが好きになった。ふと、彼女と一緒になってインドネシアで静かに暮らすのもいいかもしれないと思ったこともあったが、私はそうしなかった。
その後、彼女は結婚して幸せに暮らしたと聞いて喜んだのだが、ある人がふと私にこう漏らした。「彼女は結婚したんじゃない。現地妻にされたんだ」
きちんと結婚できたのではなかったのか……。
そう思ったとき、私は売春地帯に堕ちる女性がそんな簡単に幸せになれるわけがない現実を突きつけられて、単純に喜んだ自分の浅はかさや、悔しさや、現実の重さに、涙を止めることができなかった。
インドネシアでは、貧しくても、きちんと結婚している女性もたくさんいる。彼女が、そんな小さな幸せすらもつかめなかったことが悔しくて、私はひとりでずっと泣いていた。