コルカタのネタジ・スバス・チャンドラボース国際空港に入るとき、入口にあるインド人の家族がいた。
20代後半と思われるきちんと背広を着た一人の青年を囲み、その父母と姉妹が涙顔で彼を見送っていた。
ちょうど、マレーシア航空機の行方不明があったときで、空港の警備は非常に厳しくなっていた。この日は空港の入口から、すでに警官がパスポートの提示を求めていた時だった。
そのためか、この家族は空港に入らずに入口で見送ることにしたようだった。
母親は息子の手をいつまでも離そうとせず、ずっと泣いていた。息子はごく冷静な表情で母親に声をかけていたが、やがてしっかりとした表情と足取りで空港に入っていった。
彼は何度も何度も振り返り、家族に手を振った。彼の家族の方は母親も姉妹も、泣き崩れて倒れそうになっていた。空港ではたまに、こういった家族の悲痛な別れの光景を見ることがある。空港は別れの場所なのである。