ハイエナの夜
私にとってタイ・バンコクは、天国でもあり、地獄でもある。とても好きな場所なのだが、本当に堕ちると危ないところであるという自覚は常にある。

20代の前半、歓楽街パッポンの女たちと刹那的な関係を結び、退廃と堕落に生きていたが、そんな生活は楽しかった。

バンコクは現地では「クルンテープ(天使の都)」と呼ぶのだが、まさに自分は「天使の都」にいると感じて高揚する気持ちになった。きっと、誰もがそうだろう。

しかし、私は我を忘れて有頂天になるほど快楽主義者ではなかったようで、安ホテルでひとりきりになると、感情の反動がひどかった。

安ホテルの設備は悪い。全体的にボロボロで、内装の壁紙が剥がれていたり、浴室やトイレは見るも無惨に汚れていたりする。

気分が高揚しているときは、そんなものは目に入らない。堕ちた人間にはそれが相応しいとさえ思う。ところが、ふと我に返る瞬間があって、改めて部屋を見つめると、急にじわじわと恐ろしさがこみ上げて、このように思う。

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