◆貧困層はHIV予防薬もエイズ治療薬も手に入らない時代に

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「チューリング・ファーマシューティカルズ」という新しく創業されたベンチャー企業がある。創業者はマーティン・シュクレリという32歳の男だ。

この男は元ヘッジファンドのマネージャーから、製薬会社に入り込んだ男だった。

この男はヘッジファンド出身だったので、創業に際しての資金調達は楽々クリアしたようで、そこで得た90億円で、すぐに「ダラプリム」という薬の権利を買い取った。

それが2015年8月のことだった。

「ダラプリム」とはどんな薬なのか。これはトキソプラズマ症の治療薬として60年前に開発された薬だった。トキソプラズマ症とは、エイズによって免疫力が弱っている人が飲む薬で、生存のためには非常に重要な薬であるという。

この薬は単価が13.5ドル(約1620円)で、エイズの治療薬としては比較的安価なものだった。だからこそ、多くのエイズ患者の生命を救ってきたのである。

ところが、このマーティン・シュクレリという男は、この薬の価格を一気に750ドル(約9万円)に値上げした。一夜にして55倍の値上げである。

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