「水に染まると、抜けられない」と風俗や水商売に堕ちた女性が言うのはよく聞く。「朱に染まれば赤くなる」というのもよく聞く。その世界に染まったら、もう抜けられない。

不器用で、物事に真摯になる人ほど、実はそうかもしれない。自分がその世界にいるつもりではなくても、その仕事を長くするつもりではなくても、そこに数年もいると抜けられなくなってしまう。

2015年7月、フィリピン・アンヘレスにいたとき、五十路に入っているとおぼしきウエイトレスの女性がいた。彼女にそばにいてもらって、一緒に若い女性たちをあれこれ批評しながら楽しんだ。

ドールハウス。とても巨大なゴーゴー・バーで、たくさんの女たちが踊っていて、次から次へと彼女たちが男に視線を投げつける。そんな女たちに混じって、もうすっかり色気も失って贅肉のついたウエイトレスは、とても居心地が悪そうに働いていた。しかし、彼女はそこにいた。

「昔は踊っていたの?」
「もちろん」
「この仕事が忘れられないの?」
「オ・オゥ(そうなの)!」

アンヘレスには、彼女と同じように水に染まって抜けられない女たちがたくさんいる。私はそんな女たちが好きだったし、私自身も彼女たちを見て思うことがあった。

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