シンガポールの日本人墓地には「からゆきさん」と呼ばれていた日本人女性たちの墓が残されている。(からゆきさん(2)日本人墓地に記されたからゆきさんのこと)
明治から大正にかけて、外地に出て行った女性たちの運命は様々だった。
お金持ちの外国人に囲われて豊かになった女性もいれば、病気になったり、衰弱したりして、ひっそりと死んでいく女性たちもたくさんいた。
病気になっても帰れない。帰る船賃もなく、数十日に及ぶ船旅に体力も耐えられない。彼女たちは望郷の念を抱き、日本のお父さんやお母さんのことを想いながら無念に死んでいったと言われている。
無縁仏にも入れてもらえなかった日本女性はどうしたのか。
今では信じられないが、シンガポールは当時、郊外には虎やワニが棲息する危険なジャングルが連なっていた。彼女たちの遺体はそうしたところに捨てられて、野生動物の餌になっていたと言われている。
10代の半ばで異国の地で「女子(おなご)の仕事」に就き、病気になり、棄てられ、忘れられ、そして後には「国辱」と国家にも国民にも罵られて封印された女性たち……。