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南アジアのイスラム教国、バングラデシュの首都ダッカ。

富裕層の集まるガルシャン地区に「ホリー・アーティサン・ベーカリー」というレストランがある。日本大使館から数百メートルほど先にある店で、日本料理店のオーナーが経営する人気のカフェだったという。

2016年7月1日午後9時、ここに武装した男たちが8人ほど乱入してきた。

その時、店には数十人もの人々が食事を楽しんでいたのだが、この男たちは「アラーアクバル(神は偉大なり)」と叫びながら爆発物を爆発させた。

一瞬にしてカフェ内部は阿鼻叫喚の地獄になった。逃げ出せた人もいたが、33人ほどの人たちは人質になった。

すぐにバングラデシュの治安部隊がやってきたが、武装組織は用意周到で、豊富な武器弾薬を持って立てこもっており、治安部隊を寄せ付けなかった。

建物の中から、外にいる治安部隊に向かって激しい銃撃がなされて警察も応酬、これによって2名の警察官が被弾して死亡している。

手榴弾も使われて治安部隊数十人が負傷している。


バングラデシュでは、いったい何が起きていたか?


犯人はISIS(イスラム国)か、ISISの影響を強く受けた現地のイスラム原理主義者であると言われた。

バングラデシュではここ数年、イスラム社会に蔓延していくイスラム過激派の勢いを受け継いで、国情は徐々に悪化していた。

中東アルカイダ系組織、アフガニスタンのタリバン、そして急激に台頭して中東を暴力の渦に陥れているISISのような組織はみんなバングラデシュに影響を与えたのだ。

たとえば、2015年8月7日、ダッカでイスラム教に批判的な見方をしていたブロガー、ニロイ・チャクラバルティ氏が自宅で襲われて殺された事件があった。(唯一絶対の宗教心や保守的な風土が崩壊していく社会の中で

その後、イタリア人が襲撃されて殺されたり、日本人がバングラデシュ北部の町で殺されたりする事件が相次ぎ、さらにはバングラデシュの国内にいるヒンドゥー教徒やキリスト教徒も標的にされて襲撃されるという事件が起きていた。

バングラデシュ内でヒンドゥー教徒たちが特に危険にさらされている。比較的裕福なヒンドゥー教徒に、現地のイスラム教徒は嫉妬のような感情を持っている。

そのため、2015年に入って国情の悪化を恐れたヒンドゥー教徒たちが、インドのベンガル州コルカタの方に移っていく流れがあった。

2016年に入っても異教徒や外国人襲撃が止まらず、犠牲者は半年で30人にのぼり、それぞれの事件でISISやアルカイダが犯行声明を出していた。

業を煮やしたバングラデシュ政府は、2016年6月になってからイスラム過激派たちを200名、そしてそのシンパたち1万人以上を次々と摘発・逮捕していた。

しかし、これに対して過激派ではないイスラムの保守系が激しく抗議し、バングラデシュの国内情勢は政府の思惑とは逆にもっと悪くなってしまった。

バングラデシュは、もともと安全な地区ではなかったが、さらに悪化したということだ。

こうしたことからバングラデシュ国内にいる外国人はなるべく目立たないように無用な外出を控え、比較的安全なガルシャン地区から出ないようにしていたようだ。

しかし2016年7月1日午後9時、逆にそこを狙われた。




2016年7月1日午後9時、ここに武装した男たちが8人ほど乱入してきた。一瞬にしてカフェ内部は阿鼻叫喚の地獄になった。逃げ出せた人もいたが、33人ほどの人たちは人質になった。

人質全員が、ナイフで切られて死亡していた


レストランに突入した武装組織の男たちは、いきなり発砲しただけでなく火炎瓶を投げて爆発させたとも言われている。最初から人質の命を守るつもりはなかったことが窺える。

ただ、バングラデシュ人を殺すつもりはなかったようで、いったん人質として捕らえた後、コーランの一節を暗唱できるかどうかひとりずつ尋ね、できた人間は解放したという。

これは2013年9月21日に起きたケニアの「ウエストゲート・ショッピング・モール」襲撃事件と類似している。

この時は、イスラム教の預言者ムハンマドの母親の名前を知らない「不信心者」はみんな殺された。

あなたはムハンマドの名前をこの場で言えるだろうか。言えなかったら死ぬということだ。(預言者ムハンマドの母親の名前を知らないと、あなたは死ぬ

レストランで人質にされた人々はみんな外国人だ。イスラム教の預言者ムハンマドの母親の名前を知らないのは当然だし、コーランの一節を暗唱できなくても当然だ。

そんな教育を受けていないし、今までそんなものを知らなくても生きていけた。

しかし、武装組織はそんな人間は生きている価値はないと考えて、警察が突入した翌日午前7時40分には、すでに人質20人を拷問してナイフで刺さして殺していた。

人質になったのは33人と言われているが、この中の20人が「ナイフで刺されて殺されていた」と言われている。20人のうち、9人がイタリア人、7人が日本人、残りはまだ不明だ。

日本政府は「国際テロリズム緊急展開班」をすでにバングラデシュに派遣しており、7月2日の夜には正式にこの7人が死亡したと発表している。

この日本人は5人が男性、2人が女性だった。全員が国際協力機構(JICA)のプロジェクトを進める人間で、交通のインフラ事業に関わっていたと言われている。





レストランに突入した武装組織の男たちは、いきなり発砲しただけでなく火炎瓶を投げて爆発させたとも言われている。最初から人質の命を守るつもりはなかったことが窺える。

現代社会は一般市民を殺害する「暴力の時代」に


事態が膠着している間、バングラデシュ政府当局は、現場に陸軍と海軍の特殊部隊を派遣して突入の準備を整えていた。

実際に突入が開始されたのは、日が明けてからの午前7時40分だった。

この特殊部隊の突入で、立てこもっていた武装組織の男たち6人は射殺され、ひとりが拘束されて事件は収束したが、最終的には人質20人が死亡するという最悪の事態になっていた。

この事件を受けてISISはメディアに「外国人を含む24人を殺害した」と犯行声明を出しているが、同時にアルカイダ系の組織も「自分たちがやったテロである」と犯行声明を出している。

このどちらの組織が関与していたとしても不思議ではないのがバングラデシュの国情だ。

ISISはシリア・イラクで次第に追い込まれているが、そのために全世界のイスラム教徒に"Die in Your Rage!"(憤怒の中で自決しろ!)と暴力蜂起するように扇動している。

「爆弾でも、ナイフでも、銃弾でも、車でも、岩でも、あるいは自分の靴でも、拳でも、何でも使ってテロを起こせ」

ISISの幹部アル・アドナニがそう叫び、それに全世界のイスラム教徒が呼応しているのである。(誰も気付かない間に、暴力のグローバル化がやって来ていた

こうしたISISによる扇動によって、フランスでもベルギーでも同時多発テロが引き起こされて大量の人たちが死に、アメリカでも乱射事件が起きている。トルコでも空港で爆破テロ事件が起きたばかりだ。

今回の事件もこうしたテロ事件の一連の流れであると見ても間違いない。

今回の事件は日本人が巻き込まれたので、日本でも大きく取り上げられているが、すでに現代社会は一般市民を殺害する「暴力の時代」に入っていることをリアルに見せつけた事件でもあった。





武装組織の人数、被害者の人数、状況は、現時点で分かっている範囲でまとめております。実際の人数や状況は違っている可能性もありますが、ご了承下さい。



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