生活苦に追い込まれて自殺まで考えなければならなくなる人の多くは、「金がない人」というよりも「借金がある人」であると言われている。

どちらも「金がない」という点では同じだ。しかし、この2つは似ているようで違う。

借金があるというのは、期日に追われているということであり、その期日は自分の都合で待ってくれないものである。「金がないから食事を我慢する」とか言ってられない。

自分を犠牲にしても、金を集めなければならない。それが借金の正体だ。

どうしても何とかしなければ、自分の生活そのものが崩壊してしまう。今の生活がすべて吹き飛んだ挙げ句、さらに社会的な制裁も受けなければならない。

最近は簡単に「自己破産すればいい」「返せない借金は返さなくてもいい」と言われるのだが、金が絡むと貸した方もまた必死になって取り立てるので、そう簡単にはいかない。

そもそも、「浪費」で蕩尽して返せない借金は、自己破産すらも認められないケースが多い。踏み倒すにも相当な覚悟が要るということだ。


日本人が借金をする理由の上位10項目とは何か?


借金と言っても、その内容は様々だ。住宅ローンや事業への投資など、将来に見返りがある計画的な借金は「良い借金」であるとも言われている。

しかし将来の見返りがなく、「今の楽しみ」のために行き当たりばったりにする借金は「浪費」のための借金である。それは誰が見ても悪い借金だ。

日本人は堅実だと言われている。それでも貸金(かしきん)業が成り立っているのを見ても分かる通り、借金を抱えている人はどこにでもいる。

ところで、日本人はどんな時に借金をするのだろうか。

日本には、消費者金融、クレジット業、事業者金融等が加盟している「日本貸金業協会」というのがある。

この協会が出している「資金需要者等の現状と動向に関するアンケート調査結果報告」統計を見ると、日本人が借金をする理由がまとめられている。

理由は多重なので合計して100%にはならないのを注意して、上位10項目を見ると、以下の通りとなっている。

(1)趣味・娯楽(レジャーや旅行を含む) 47.9%
(2)食費 22.9%
(3)納税・給付 12.7%
(4)家賃支払い 12.3%
(5)衣料費 12.2%
(6)授業料・保育費・給食費等 11.8%
(7)電気・ガス・水道等の光熱費 11.5%
(8)自動車ローンの返済 10.9%
(9)ギャンブル 10.1%
(10)衣料費 9.9%

これを見ると面白いことが分かる。2位以下は、確かに生活苦からの借金を窺わせるものである。食費が出せなくて借金をする人が約23%近くもいるのだが、いかにも生活に困窮しているようなイメージが浮かび上がる。

しかし1位はそうではない。

47.9%は「趣味・娯楽・レジャー・旅行」等のお遊びである。「今の楽しみ」のために行われる借金であり、本来であれば我慢すべきところで金を借りているということだ。

借金を借金で返すような自転車操業にまで突き進む


借金をするというのは、「それを支払う金がない」ということなのだが、金のない人が金を借りると、ただでさえ苦しい生活がより苦しくなっていく。

これを打開するには「収入を増やして支出を減らす」という2点を実現しなければならない。収入を増やすというのがなかなか難しいことであるとするならば、かなりの気合いを入れて支出を減らす必要がある。

支出を減らすと言えば、「趣味・娯楽」は真っ先に切り捨てて我慢すべきカテゴリーに入る。

ところが、日本貸金業協会のデータを見ると、逆にその真っ先に切り捨てなければならないものが、最も上位に来ているという皮肉な結果となっている。

これが「浪費で蕩尽して返せない借金」になる可能性が高い。なぜなら、「趣味・娯楽」はそれが後になって利益をもたらすことは基本的にないからだ。使ってしまえば、それで終わりなのである。

ところが、借金返済は遊び終わったところから始まっていく。これが心理的な負担になるのは明らかだ。

借金地獄に陥る人の特徴は、最初は「少額の借金はすぐに返せる」という甘い見込みがあるからだと言われている。

甘い見込みで借金をするということは、「借金を返し終わるまで次の借金はしない」ということを徹底しないということでもある。

借金を返し終わる前に、また次の借金をしてしまう。つまり、借金が癖になっていく。少額であればあるほど心理的なハードルが低い分、借金癖が付きやすい。

いったん借金癖に堕ちると、次第に返せなくなるという現実ものしかかり、借金を借金で返すような自転車操業にまで突き進む人も増える。

そうすると、最初は「趣味・娯楽」で利用していた借金は、やがて食費、家賃、衣料費、光熱費の支払いにまで広がっていくのである。

返せない借金は、社会人が抱える最も深いストレス


人生は常に順調とは限らない。逆風はいつでも吹くし、唐突にトラブルが湧き上がる。そのため、返せると思った借金が返せなくなることも起きる。

性風俗の仕事を選んだ女性の多くは、憧れてアンダーグラウンドの世界に入ったというよりも、ちょっとした借金で生活が回らなくなってその世界に入った女性が多い。

「生活できなくなった」だけでなく、「借金で首が回らなくなった」から堕ちる。

ただ「生活できなくなった」のであれば、安いアパートに引っ越して安い食材で耐えていれば何とかなるかもしれない。しかし借金があれば、まずは返さないといけないので「何ともならない」のである。

私がインタビューした風俗店の店長は、その仕事を始めて間もない頃、消費者金融のATMの前で張り込み、キャッシングしている女性に声をかけてキャスト(風俗嬢)を集めていたと告白していた。

また多くの風俗嬢にインタビューしてみると、やはり風俗に堕ちる前には、食べていけなくなってカードローンに頼り、それも返せなくなって堕ちたというパターンをなぞっている女性をよく見かける。

「借金が返せなくなる」というのは、決して珍しいことではないというのを私はさんざん見てきた。アンダーグラウンドはそんな男女で満ち溢れているのである。

しかし、容姿や年齢や環境で誰でも性風俗で稼げるわけでもないし、男であれば身体を売るという選択肢はほとんど皆無に近いだろう。

そのため、抱えた借金はやがて最後に踏み倒すことになる。そうしたくなくても、そうせざるを得ない状況に追い込まれるのだ。

返せない借金は、社会人が抱える最も深いストレスであるとも言われている。借金は、焦燥感と絶望と苦しみをその人に与えるのである。

だから、借金を抱えすぎて返せなくなった人は、過大なストレスに耐えきれずに自殺していく。(人はなぜ、クリスマスや年末に自殺したくなってしまうのか

無駄な借金をしないで生きるというのは、普通の人にとっては最も重要な金融リテラシーである。



日本を代表する歓楽街「歌舞伎町」の正面にある巨大な看板を見ると、レイク、アコム、アイフル等の消費者金融が陣取っているのが分かるはずだ。巨大な看板の広告を出せるというのは、それだけ多くの人が借金を抱えているということを意味している。



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