2009年10月に逮捕され、2011年10月25日に死刑宣告を受けた竹内真理子は、その後上告していたが、2015年10月15日に上告は棄却されて死刑が確定している。あとは恩赦されるかどうかだが、ほぼ死刑で決まりであると言われている。改めてこの記事をトップにしたい。

マレーシアでひとりの女性が覚醒剤を4キロも持ち込んだとして逮捕されたのは2009年10月のことだった。竹内真理子容疑者、35歳。

誰もが知っていることだが、東南アジアで麻薬の持ち込みは無期懲役か死刑かのどちらかになってもしかたがないほどの重罪である。

覚醒剤を4キロと言えばもはやプロの密輸と同じ量であり、そのニュースを見たとき、これは冤罪が証明できなければ間違いなく死刑になるケースだと感じた。

それから2年後の2011年10月25日、彼女は大方の予想通り、死刑を宣告された。


ドラッグ・ミュール(麻薬の運び屋)


彼女は「荷物の中身は知らなかった」と無罪を主張しているが、残念ながらそれは通らない。

なぜなら、ドラッグ所持で逮捕された密売人は100人中100人が同じことをいうからだ。

これだけ麻薬に対して世界各国が目を光らせている事情があって、35歳にもなる女性が「中身は知らなかった」など、そんな言い訳が通るはずもない。

しかも、荷物の底にそれを隠していた。携帯電話も4つ持っていた。状況証拠を見て判断すると、どう考えても彼女の言い分は不可解だ。

荷物の「底」に隠しておいて、それは「預かっただけ」で、「中身は知らない」のだが、中身を知らないのになぜ荷物の底に隠しておくのだろうか。しかもなぜ、携帯電話を4つも所持する必要があるのか。

明らかに彼女は自分のしていることを知っていた。それが説明できないから死刑判決なのである。彼女は上訴する方針だと言うが、おそらく死刑は覆らないだろう。

彼女の最終目的地だったのは、もちろん日本である。

彼女はクアラルンプールを経由地に選んだが、恐らくそれが一番審査が「甘い」と見越して選んだのだと思う。



竹内真理子被告。2011年10月25日、死刑判決。


所持していたカバンは3つ。このカバンの底に隠していた。


運んでいた麻薬。元看護婦はこれを見ておかしいと思わないのだろうか。

覚せい剤密輸、日本人元看護師に死刑

「裁判所は竹内被告が“中に何が入っているか”知った上でスーツケースを運んでいたと信じ込んでいる。しかし彼女は何も知らなかったのです」(竹内被告の弁護士)

竹内被告は判決に先立ち、拘置所内でJNNの取材に応じた際も、スーツケースについて、「ドバイで外国人の男から預かったもので、覚せい剤が入っているとは知らなかった」と話し、密輸の認識はなかったと強調しました。

男とは東京で知り合った後、ビジネスクラスのチケットをプレゼントされてドバイへの旅行に誘われ、帰国の際、「友達の荷物を代わりに持っていってほしい」と頼まれたといいます。

クアラルンプールは10年前から麻薬ルート


ドバイークアラルンプールというのは、まさにドラッグ・ミュール(麻薬の運び屋)が使うルートであり、しかもマレーシアこそがそのドラッグ・ミュールの本場であることはよく知られている。

大量のマレーシア女性がドラッグ・ミュールに仕立て上げられて逮捕されている。

マレーシア政府は自国女性が片っ端からドラッグ・ミュールとして利用されている状況を知っているので、女性の渡航が奇妙であれば必ず監視に入る。

マレーシア税関もそれを見越して特別に警備しているところを彼女が飛んで火にいる夏の虫になったということになる。竹内真理子容疑者はそれを知っておくべきだった。

4キロの麻薬を用意して、かつ国際的に売買できる力があるのは、送り手も受け手も「マフィア」である。

彼女は東京で外国人の男と知り合い、ビジネスクラスのチケットをプレゼントされて、ドバイに行き来していた。これは典型的なドラッグ・ミュールの手口である。

彼女そのプレゼント渡航を何度も繰り返している。すなわちカネで引き受けていたということに他ならない。

たとえば、1回で成功報酬が50万円だったらどうだろう。彼女は少なくとも6回は成功させている可能性がある。旅行するだけで300万円を稼いだことになる。

カネに困っていたり、イージー・ビジネスを常に考えている人間の中には危険を承知で引き受けることもあるのかもしれない。

「国境越え」のテクニック


ドラッグ・ミュール(Drug Mule)とは、直訳したら「麻薬のラバ」「薬物を運ぶラバ」という意味だが、その意味するところは「麻薬の運び屋」である。

麻薬シンジケートは、使い捨てにする麻薬運搬人を常に探していて、彼らを「ドラッグ・ミュール」もしくは複数形で「ドラッグ・ミューズ(Drug Mules)と読んでいる。

コカイン・ヘロイン・覚醒剤等の麻薬が世界中に流通しているが、麻薬組織(ドラッグ・シンジケート)の大きな課題として、どのようにして国から国へトラフィックするかという点にある。

逮捕されるとすれば、この「国境越え」がもっとも危険な箇所であり、ここに麻薬ビジネスが成功するかどうかの鍵がある。

一方で迎え撃つ側、税関もまたここが「最後の防波堤」だ。ここをすり抜けられたら国内では麻薬がフリーパスで出回る。

空路・水路・陸路のそれぞれが麻薬運搬のターゲットではあるが、空港経由で持ち運ばれて発覚するケースがもっとも多い。

逆に言えば、「空港経由」がもっとも麻薬組織には割が合わないルートに思える。

しかし、それが相変わらず使われるというのは、逆説的だが、成功している例も数多いからだと考えることもできる。

飛行機で運び、そのまま空港を通りぬけさえすればいい。たったそれだけだ。多くの旅行者にまぎれ、そのまま税関を抜け出せばいい。

こうした実態をリアルに描いた映画もある。普通の女性が、金のためにドラッグ・ミュールとなる。(『そして、ひと粒のひかり』。麻薬を運ぶ17歳の女性の物語

隠蔽例の具体例


かくして、様々な隠蔽が画策されるようになった。どういう例があるのかと言うと、以下を見てほしい。

・服の下に麻薬バッグを巻きつける。
・コンドームに詰め、膣内・直腸内に隠す。
・コンドーム(特殊カプセル)に詰め、飲み込む。
・キャリーバッグの底を二重にして隠す。
・シャンプーの中に混ぜて隠す。
・洋酒に混ぜて隠す。
・ピーナッツバターに詰めて隠す。
・ジャムの中に詰めて隠す。
・マリファナをタバコに詰めて偽造。
・コーヒーで濡らしたタオルにくるむ。
・細工した靴底に隠す。
・石像内部に隠す。
・宅急便(もしくは郵便)で送る。
・ハンガーをくりぬいて隠す。
・チーズに混ぜて隠す
・下着に隠す
・カメラ三脚の棒に隠す。
・パソコンの中に隠す。
・靴下に隠す。
・石鹸の中に隠す。
・ギブスの中に隠す。
・ペットの体内に隠す。

同じようにやろうと思う人もいるかもしれないが、上記はすべて逮捕された運搬人の例だ。

手口としてはすでに把握されているわけであり、逮捕されるのかされないのかは時の運になる。

体腔に隠す手口が一番確実なようで、それが手軽にできるのが女性の膣を使う方法だろう。

ドラッグに関心のある女性が、それで自分用の麻薬を運搬をしていることもあれば、コカインを500グラムも詰め込んで逮捕された女性もいる。

それでも500グラムだが、竹内真理子容疑者の場合は4キロである。それがどれほどとてつもない量なのか考えて欲しい。

マレーシアの女子学生とフェイスブック


ところで、BBCが若いマレーシア女性が「ドラッグ・ミューズ」として大量に逮捕されているという記事を出している。

タイトルはこうだ。「フェイスブックで、麻薬の運び屋の少女がリクルートされている」

そして記事の内容は、若干衝撃的なものである。

「1991年以来、海外で逮捕されたマレーシア人1560人のうちの785人は麻薬の運び屋になったことで逮捕されていて、そのうち149人は女性だった」

「そして、これらのうち70人は違法ドラッグを持ち込んだことによって、死刑が宣告されている」

フェイスブックを使う同国の女子学生などが麻薬組織の高い報酬に釣られて麻薬の運び屋になってしまっているということだ。

マレーシアでも学生の間でフェイスブックが非常に流行っていて、国際調査企業TNSの先月のレポートによると、「フェイスブックで多くの友人を持つマレーシア人は、5億人以上のプロフィールの会員を見ることに一日平均9時間を費やしている」のだという。

政府関係者もそれを把握している。

「ソーシャル・ネットワーキング・サイトのフェイスブックは、国際麻薬組織には麻薬の運び屋としてマレーシア女性をリクルートする格好の場所となっているようだ」

「多くの被害者はフェイスブックを通して親しくなっている。フェイスブックでは良い友だちを装うことができる。しかし、それはとても危険な友達なのだ」

「多くの被害者はアフリカ系のシンジケートメンバーと親しくなっていたようだ」

これらのシンジケートの一員は被害者と親しくなったあと、ホリデーに誘い出す。たとえば、中国・日本・ラテン・アメリカなどだ。

そこで、旅に使うポケットマネーとして1000ドルを使わせて運び屋になることを提案してくるのだという。

「ドラッグの運び屋になる状況は、悪いというよりも、最悪という方向に転がっている」とマレーシア政府は認識している。

今はマレーシア女性がターゲットだ。しかし、その手口が知られるようになったので、何らかの形で竹内真理子容疑者が「使われた」のだろう。

ちなみに、他にも関空ではナイジェリア経由の覚醒剤密輸が6件発覚しているという。ナイジェリアのマフィアは、女性を恋愛で落として、彼女たちをドラッグ・ミュールにしているようだ。

日本の報道ではこれを「ラブ・コネクション」と表現している。

マフィアは竹内真理子を利用し、彼女もまたカネでマフィアを利用し、結局彼女が逮捕されてツケを払っている。そういう構図が見えてくる。



麻薬の入ったカプセル。こうしたものを飲み込み、国を越える人たちはドラッグ・ミュールと呼ばれている。


竹内真理子と同じように、ドラッグ・ミュールを行ってインドネシアの空港で逮捕され、後に獄中で首を吊って自殺した森田裕貴という日本人もいます。森田裕貴については、こちらで書きました。(森田裕貴。ドラッグで禁固19年の刑、獄中で首を吊って自殺