パタヤは観光都市として脱皮しようとしているが、それでもこの都市は今も売春にまみれている。そこは熱帯の気だるい空気と蒼い海とセックスとドラッグが目の前に広がっている。

この堕落の地をどうして忘れることができるだろうか。堕落に育った人間にとっては濁った水の中が過ごしやすい。

このサイト、ブラックアジアは私の愛する堕落がたっぷり含まれており、タイ編の少なからずはパタヤが舞台である。(売春地帯をさまよい歩いた日々:タイ編

私は著書『ブラックアジア第二部(いいヤツは天国へ逝く、ワルはパタヤへ行く)』を刊行しているが、ここでも売春都市パタヤを取り上げている。(ブラックアジア書籍版第四弾『ブラックアジア・パタヤ編』

パタヤは私にとっては愛すべき場所であり、それ以外の何者でもない。自分を見失うとパタヤに戻れば、本当の自分を見つけることができる。

しかし、それは私個人の実感であり、すべての人がそうであるとは限らない。売春ビジネスは表社会の人々にとっては「不潔で不衛生な場所」であり、それを憎む人も多い。


現実を指摘された記事に驚き、激怒した男がいた


イギリスの大衆紙「ミラー・オンライン」は、2017年2月17日にこのパタヤを取り上げた。題名はこのようになっていた。

「世界的なセックス都市の内部。世界で最も売春女性が多い現代のソドムとゴモラと呼ばれる街」

『ブラックアジア第二部《パタヤ編》』では副題に「いいヤツは天国へ逝く、ワルはパタヤへ行く」と付けたのだが、実はこの記事もまた「いいヤツは天国へ逝く、ワルはパタヤへ行く」という文章から始まっている。

そして、年間で100万人以上もの観光客がパタヤに来て、多くの男たちは「ただひとつの関心事」で占められていると書かれている。

それが2万7000人の熱い女たちのことである。

パタヤはゴーゴーバー、オープンバー、ライブバー、置屋、マッサージパーラーと何でも揃っている。バーは朝から開いているし、お気に入りの店が閉まっていれば、ビール瓶を持ってビーチ・ロードに向かえば、自然のバーになる。

男はその気になれば、いつでもセックスにありつける。パタヤとは、そんな堕落と享楽の地である。

大衆紙ミラーは、その「現実」を素直に書いて記事をインターネットで公開したのだが、その記事を読んで驚く人は誰もいないはずだった。パタヤが現代のソドムであることくらいは世界中の誰でも知っている。

だから、売春地帯(R.L.D.)の熱い身体の女たちを求めて世界中をさまよい歩くハイエナと化した男たちがパタヤに集結し、沈没し、次々と破滅しているのだ。(売春地帯で破滅していく男たち

このミラー紙の記事は当然のことながらタイでも広く読まれ、タイのマスコミは「欧米人(ファラン)の新聞がタイをこんな風に書いている」と紹介した。

それに驚き、激怒した男がひとりいた。



「世界的なセックス都市の内部。世界で最も売春女性が多い現代のソドムとゴモラと呼ばれる街」それがパタヤである。

「セックス・シティ」の汚名返上を本気で考える


誰もが知っているはずの現実を指摘されて激怒した男。それはプラユット・チャンオチャ首相である。

プラユット首相は2014年にインラック首相を放逐した後、軍事政権のトップとして現在のタイを率いる堅物の指導者だが、自国を「世界有数のセックス・シティ」と呼ばれるのに、どうしても我慢ができなかったようだ。

プラユット首相は堅物で、健康マニアで、不品行を嫌い、売春地帯も売春婦も大嫌いだというのは、タイ国民の間でもよく知られている。

2014年9月15日、タイのタオ島でイギリス人のカップルが残虐に殺害されるという事件があった。(リゾート地タオ島で惨殺された23歳の英女性の無残な姿

この事件でプラユット首相は「水着姿でウロウロしている女性が悪い」という要旨の発言をして国内外から袋叩きにされた。正確に言えばプラユット首相はこのように言った。

「彼女たちはわが国が美しく安全だから好き勝手なことができ、ビキニを着てどこにでも行けると思っている。しかし、彼女たちが美しくなかった場合を除けば、ビキニで安全でなどいられるだろうか?」

プラユット首相は女性が水着でウロウロするのも嫌っている。それくらいだから、権力基盤が固まったあたりから、タイ社会の浄化を繰り返し繰り返し行うようになった。

パタヤは以前からストリート売春をする女性がしばしば摘発される場所だが、そうした摘発も頻繁になり、さらにマッサージパーラーも立入検査が行われるようになった。(タイ軍事政権が風紀取り締まりでパタヤをクリーン化する?

さらにバンコクでも、ナタリー、アムステルダム、エマニュエル、シーザーと、名だたるMP(マッサージパーラー)を次々と摘発して閉鎖に追い込んでいる。(バンコク有数のマッサージ・パーラー「ナタリー」が摘発

実はプラユット首相の政敵であるタクシン元首相も売春地帯を非常に嫌っていて、2006年9月19日のクーデターがなければ、タクシンによってタイ売春地帯が壊滅していたのではないかとも言われるほどだった。(タクシン、9.11。2001年のタイ売春地帯で何が起きていたか

つまり、タイでは2000年代に入ってから「セックス・シティ」の汚名返上を本気で考えるようになっており、プラユット首相もその気でいるということだ。



タイでは2000年代に入ってから「セックス・シティ」の汚名返上を本気で考えるようになっており、プラユット首相もその気でいるということだ。

パタヤの売春地帯は、じわじわと影響を受ける


プラユット首相はミラー紙の記事を受けて2017年2月21日の記者会見でマスコミたちにこのように釘を刺した。

「タイのマスコミは、外国人によって書かれた話を信じるべきではない。そしてタイのマスコミがそれを書き立てて問題を強調し、国の品位を貶める必要はない」

そして、このように付け加えた。

「警察当局にはパタヤのセックス産業を粛清(パージ)するように命じている」

「警察当局は売春に関わる者を逮捕するだろうか。イエス。彼らはそうする。私はこの問題をクリアにするために警察に命令している」

「私は売春ビジネスを支持していない。タイのイメージを向上させるために何でもする」

今までタイの為政者は「売春ビジネスは問題だ。摘発しなければならない」と言い続けて来たのだが、タイは観光立国であり、GDPの約3%は売春ビジネスが占めているのではないかとも言われるほど巨大産業になっている。

そのため、口では摘発と言いながら大した摘発をしておらず、売春ビジネスは事実上、野放しになったままだ。警察も賄賂によってしっかりと悪徳と結びついており、摘発しようにも警察が情報を漏らして対策される。

売春ビジネスを叩き潰したら観光業も打撃を受けてGDPも減り誰も得しない。だから建前と本音は違ってタイの売春ビジネスはいつも生き残り続けてきた。

そのため、「プラユット首相ごときが何を言っても無駄だ。売春ビジネスは消えない」という意見も多い。

実際、タイのみならず、いつの時代のどこの国でも売春ビジネスを摘発しようとして多くの国が失敗した。摘発してクリーンにしても、売春ビジネスは地下に潜って生き残り、それは絶えることがない。

ただし、短期的には摘発は大きな効果をもたらす。

それは繰り返し行われ、パタヤのゴーゴーバーも警察が急襲するような姿も見られるようになっている。パタヤの売春地帯はじわじわと影響を受けることになるだろう。

もっとも、パタヤでアルコールとドラッグとセックスに溺れている男たちがそんなことに気付くとは思えないが……。



タイのみならず、いつの時代のどこの国でも売春ビジネスを摘発しようとして多くの国が失敗した。摘発してクリーンにしても、売春ビジネスは地下に潜って生き残り、それは絶えることがない。



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