あなたは警察に賄賂を要求されたり、賄賂を支払ったりした経験はあるだろうか。

日本で警察と関わると言えば、交通規制や検問が多いはずだが、それでいちいち賄賂を要求されて困ったという話はあまり聞かない。しかし、一歩日本に出るとそうではない。

私はカンボジアでは警察に闇検問されて金を毟り取られた経験もあるし、何もしていないのにホテルの部屋に踏み込まれたこともある。賄賂目当てだった。

カンボジアの警察官とは相性が悪すぎるので、私はカンボジアのスラムに寝泊まりしているとき、制服警官がやって来たら売春する女性たちと一緒に身を隠した。

ところで警察官は何をしにスラムや売春地帯にくるのか。売春宿に入り込んで、女性やオーナーから金を毟り取るためにやって来ているのである。

暴力団のショバ代の回収みたいなものだ。それがカンボジア警察の小遣い稼ぎになっていた。抵抗すればどうなるのか。もちろん、違法売春だとかドラッグ所持みたいな何かの罪をでっち上げられて逮捕される。

警察がやっているので、警察に訴えても無駄だ。


「腐敗認識指数の各国ランキング」で見てみた


何もしていないと言えば、途上国バングラデシュではもっとひどい目に遭った。

私は首都ダッカ郊外のタンガイルの売春地帯で女性の部屋に寝泊まりしていたのだが、ある日複数の警官が部屋にやってきて有無を言わさず私を連れていき身柄を拘束した。

理由? いまだに自分がなぜ拘束されたのかまったく分からない。女性の部屋で寝泊まりしていたというだけだ。結局この時も賄賂を払って解放された。

ところで、カンボジアとバングラデシュの腐敗はどちらがひどいのか。

1993年に世界銀行に関わっていたドイツ人ピーター・アイゲン氏によって設立された「トランスペアレンシー・インターナショナル」という国家的腐敗、汚職の撲滅に取り組むNGO団体がある。

この団体は「腐敗認識指数の各国ランキング」を提出しているのだが、2016年のデータを見るとどうだったのか。カンボジアの腐敗度は世界176ヶ国中で156位、バングラデシュの腐敗度は145位となっていた。

順位は出されているが、腐敗度に関して言えばどちらもそう大して差はない。どちらも同じくらいひどい。

しかし、あえて「どちらがひどいのか」と問えば、カンボジアの方が若干悪いと言うことができる。カンボジアは東南アジアで最も腐敗と汚職がひどい。

最近、フィリピンのドゥテルテ大統領が「フィリピン警察の腐敗は底なしだ」と嘆いているのだが、そのフィリピンは101位である。実はカンボジアよりもマシな国家である。

タイはどうなのか。奇しくもタイ警察も順位で言えばフィリピンと同レベルだった。そう考えれば、カンボジアの腐敗がいかにひどいか想像できるはずだ。

政治家、公務員、警察官、軍隊という国の根幹をなす人たちが、みんなまとめて腐敗しているということである。賄賂を払わないと話が進まないということだ。

どれもが政治的にも失敗国家であり、貧困国だった


ところで、カンボジアよりもひどい国はもちろんある。では、世界で最も腐敗している国家はどこなのかをここにリストアップしておこう。

「世界で最も腐敗汚職がひどい国トップ20」である。

(1)ソマリア(アフリカ)
(2)南スーダン(アフリカ)
(3)北朝鮮(アジア)
(4)シリア(中東)
(5)イエメン(アフリカ)
(6)スーダン(アフリカ)
(7)リビア(アフリカ)
(8)アフガニスタン(アジア)
(9)ギニア・ビサウ(アフリカ)
(10)ベネズエラ(南米)
(11)イラク(中東)
(12)エリトリア(アフリカ)
(13)アンゴラ(アフリカ)
(14)コンゴ(アフリカ)
(15)ハイチ(中米)
(16)チャド(アフリカ)
(17)中央アフリカ(アフリカ)
(18)ブルンジ(アフリカ)
(19)ウズベキスタン(アジア)
(20)コンゴ(アフリカ)

これらの国を見ると気付くのは、20ヶ国中13ヶ国がアフリカの国であるということだ。アフリカは腐敗と汚職が蔓延した国家であり、清廉潔白が身についていない文化や風土になっているというのが分かる。

その他は、中東、中央アジア、ラテン・アメリカの国々に散らばっているのだが、全体を俯瞰して言えるのは、やはりどれもが政治的失敗国家であり、貧困国であるということだ。

貧困だから腐敗や汚職が進むのか、それとも逆に腐敗や汚職が多いから貧困なのかは、どちらの見方が正しいのか分からない。いずれもしても、腐敗や汚職と貧困はやはり深い関係があるということだけは間違いない。



戦争と内戦、難民と飢餓に揺れるソマリアは、世界で最も腐敗と汚職のひどい国家だった。失敗国家で生きるには金がいる。「地獄の沙汰も金次第」である。

貧困国に行けば、政府も公務員も警察も信じるな


では、東南アジアに限定してリストを見れば、どのようになっているのだろうか。腐敗している順から並べて見ると、以下のようになっていた。

(1)カンボジア(156)
(2)ミャンマー(136)
(3)ラオス(123)
(4)ベトナム(113)
(5)フィリピン(101)
(6)タイ(101)
(7)インドネシア(90)
(8)マレーシア(55)
(9)ブルネイ(41)
(10)シンガポール(7)

(国名の隣の数字はトランスペアレンシーの出した指数)

体感としてはタイはもっと清廉な感じがするし、インドネシアはもっと腐敗しているような感じがする。

このトランスペアレンシー・インターナショナルが出している腐敗度の指数は政治家・国家政策等の中枢を総合的に判断した結果なので、警察官の質のひどさだけを判断して出されたものではない。

そのため、体感とは違う結果になっていたとしても、それは不思議ではない。ところで、この結果は国の貧困度とも関連しているのだろうか。

それを知るためにIMFが2016年10月に出しているGDP(一人当たりの名目GDP)のデータに基づいて、低い順からリストを並べると結果はどうなるのか。このようになる。

(1)カンボジア
(2)ミャンマー
(3)ラオス
(4)ベトナム
(5)フィリピン
(6)インドネシア
(7)タイ
(8)マレーシア
(9)ブルネイ
(10)シンガポール

上記の腐敗度リストと、この「一人当たりの名目GDP」、すなわち経済的豊かさを見ると、6位と7位のインドネシアとタイの順序が入れ替わっているだけで他は完全に一致しているのが分かるはずだ。

貧困と腐敗汚職のレベルは密接な関係にある。これは現実社会でどのように考えるべきか。答えはこうだ。

「貧困国に行けば、政府も公務員も警察も信じるな」



東南アジアと言っても、そのGDPはこれほど違う。同じ地区でも富が偏在しているのが分かるはずだ。貧困と腐敗汚職のレベルは密接な関係にある。



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