アマゾン・キンドルで売春地帯の小説をひとつアップしました。『売春と愛と疑心暗鬼(信じていいのか、信じない方がいいのか?)』というものです。

旧題は『真夜中のカリマンタン島』だったのですが、どうしても「売春」という文字を入れたくて、2017年9月9日に改題しました。

アマゾンのページはこちらです。
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今回は、「小説」というスタイルでインドネシア・カリマンタン島の売春する女性たちの話をこの島特有の歴史や風土も交えて思い入れたっぷりに書きました。

カリマンタン島の話を書いた小説はほとんどないと思います。さらにこの島で売春する女性たちを取り上げた小説は、日本でもこの小説が初であると思います。

「小説」というスタイルではありますが、例によって登場人物の女性すべてにモデルがいます。そして、登場する売春宿もまた実際にあった売春宿を書いています。

そういった意味で、フィクションには違いないのですが完全にフィクションであるかと言えばそうでもない小説であると言えます。カリマンタン島の売春する女たちはどんな女たちなのか、興味のある方はどうぞお読み下さい。


『売春と愛と疑心暗鬼』ダウンロード先





あらすじ

日本人がボルネオ島と呼んでいる世界で3番目に大きな島は、インドネシアではカリマンタン島と呼ばれている。この島の真夜中にも、日本人がまったく知らないところで、貧しい女性たちが身を潜めながら売春で生きていた。

いつも髪が濡れている女、両親を殺された女、極貧の中で生きている華僑の女……。

そして、島に漂う煙(ヘイズ)に閉塞感を感じながら、真夜中のカリマンタンをさまよう男。

ハイエナのように売春する女を追い求める男は、やがてデズリーという名の優しい女に出会うのだが、彼女が本当に優しい女だったのかどうか、どんどん疑念が湧くようになっていく。



長編小説『売春と愛と疑心暗鬼』について


ところで、『売春と愛と疑心暗鬼』の舞台は「カリマンタン島」なのですが、聞いたことがない島だと思った人もいるかもしれません。確かにカリマンタンというのは日本人には馴染みがありません。

しかし、カリマンタン島を聞いたことがなくても、「ボルネオ島」なら聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。実は、カリマンタン島とボルネオ島は同一の島です。

カリマンタン島(ボルネオ島)は世界で3番目に大きな島で、この島にはマレーシア、ブルネイ、インドネシアの3国が領土を分け合っています。

ボルネオ島というのはマレーシア側の呼び方で、カリマンタン島というのはインドネシア側の呼び方です。この小説はインドネシア領が舞台で、登場人物の女性はみんなインドネシア人です。

ところで、ブラックアジアでは一度も「売春地帯をさまよい歩いた日々」にカリマンタン島を舞台にした話を登場させておりません。

その理由は、私がカリマンタン島を訪れていたのは、インドネシア編を書き終えてインド編を書くまでの、ちょうどブラックアジアを休載していた時期だったからです。

カリマンタン島の売春事情はとても面白かったのですが、インドネシア編を書き終えてしまったし、インド編には入れ込めなかったので、カリマンタン島をさまよっていた頃の記事はまったく何も書けないまま終わってしまいました。

ただ、カリマンタンにいた頃の話は記録に残してずっと置いておりましたので、あの頃に何があったのかを思い起こすのは難しいものではありませんでした。

カリマンタン島は目立つほどの売春地帯はなく、アクセスが悪いが故に誰も売春する女性を駆って訪れる男もおりません。だから、逆にカリマンタン島はとてもディープな環境になっていたと思います。

そこは、とても素朴な女性が多くて、あまりに素朴さゆえに驚いてしまう印象すらもありました。そんな世界を、やっと書けたというのが今の実感です。

インドネシア在住で売春する女たちを追っているハイエナの中には、カリマンタン島に向かう男もいます。しかし、非常にわずかです。

そのため、ハイエナ稼業をしている男でも99%はカリマンタン島の売春を知らないと思います。

愛を見つけたように思い、疑心暗鬼にとらわれる


この小説は多くの売春ビジネスに生きる女性が出てくるのですが、その中でポンティアナの「サロン・プトリ」と呼ばれる売春宿に所属していたひとりの女性に「私」が惹かれます。

デズリーと呼ばれるボゴール出身の女性です。とても優しく、繊細で、気が利く女性で、インドネシアでもこのような女性がいるのかと思うほど気を遣ってくれる女性です。

あまりの優しさゆえに、彼女のことが忘れられなくなってしまうのですが、他で知り合った女性が「その優しさは偽りだ」と私に諭します。

「お金のために甘えて、幸せな表情をするの。そして愛してると言って、家が貧しくてお父さんお母さんにお金を送ってると言って男にお金を出させようとする」

最初、「その優しさは偽り」というのを信じなかったのですが、確かにデズリーは「私」に会って良かったと喜び、幸せな表情をし、家が貧しくてお金を送っていると、確かに私に言ったのです。

そうやって、「私」の中に少しずつ疑心暗鬼が湧いてきます。ハイエナとして、売春する多くの女たちの間をあちこちにゆらめきながら、それでもデズリーのことが忘れられず、彼女に関わっていくのですが、信じようとすればするほど疑心暗鬼がどんどん膨らんでいくことになります。

真夜中のカリマンタン島の暗く危険な売春地帯の中で、彼女を信じていいのか、それとも信じない方がいいのか、まったく分からなくなっていくことになります。

売春地帯ではしばしば、多くのハイエナたちがそこで愛を見つけたように思い、そして疑心暗鬼にとらわれます。

「信じていいのか、駄目なのか……」

この疑心暗鬼を中心に、多くの女性を通してカリマンタン島とはどんなところだったのかを浮き彫りにしていきます。

この小説は売春する女たちを追っている男の物語ですが、アンダーグラウンドなりの恋愛小説でもあります。特別な形の恋愛小説として読んで頂くのも面白いかもしれません。

皆様に楽しんで頂ければ幸いです。

鈴木 傾城



『売春と愛と疑心暗鬼』の舞台になった街のひとつ、ポンティアナの光景。現地の人たち以外には誰も知らない売春する女たちも、この街にひっそりと佇んでいます。



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