いよいよベネズエラが最後の局面に入ったのかもしれない。この国は、これ以上どうにもならないところにまで追い込まれてきている。

ベネズエラは石油価格が暴落に入った2014年半ばから急激に経済悪化が進んで、2016年1月15日にはニコラス・マドゥロ大統領が「経済緊急事態」を宣言する騒ぎとなっていた。

それ以後、事態は悪化し続けるばかりで、2017年4月に入ってから抗議デモが首都カラカスだけでなく多くの都市で連日のように発生して数百万人が暴徒と化している。

それでもマドゥロ大統領は大統領の座にしがみついており、クーデターも噂されるようになっている。

ベネズエラがこのようになったのは、原油価格の暴落に原因がある。ベネズエラは産油国であり、輸出の95%を石油に頼っている国である。

つまり、この国の浮沈は石油価格にかかっていたわけで、石油が暴落したらこの国も危機に陥る構造だったのだ。原油価格は2014年の半ばから怒濤の如く暴落するようになっており、今もまだその傾向が続いている。

ベネズエラの国内経済は大混乱し、インフレ率は2015年で210%を記録していた。食料も、衣料品も、日用品も不足して、人々は何も買えない状態に陥ってしまった。


苦境のベネズエラ政府には、もう打つ手はない


そのためにベネズエラ政府は国営スーパーで配給制を始めるようになったが、それでも物資が手に入らない。そのため反政府デモもどんどん過激になっていき、今では火炎瓶が飛び交う始末だ。

政府はそれを徹底弾圧で臨んでいる。

警察では抗議デモを押さえられなくなって民兵すらも動員しているのだが、すでにこの抗議デモには野党も参加するようになっており、打倒されるのはデモ隊よりも政府の方になる確率が高まってきた。

2015年12月6日に国会議員選挙が行われてマドゥロ大統領率いる与党は惨敗しているので、本来はこの時にマドゥロ大統領は辞任すべきだった。

恐らくマドゥロ大統領は、2015年の時点で暴落していた石油価格が何とか値を持ち直して混迷が落ち着く方向に賭けていた可能性がある。しかし、その目論見は外れた。

では、マドゥロ大統領が辞任すればベネズエラは立ち直るのだろうか。ベネズエラの輸出が、ほぼ石油しかないのであれば、この国が立ち直るのかどうかは石油価格がどう推移するかで決まる。

石油価格が持ち直さないのであれば、政権が変わったところでベネズエラが正常化する要素はまったくない。

悪いことに石油価格は2017年に入った今も落ち込んだままだ。これはベネズエラにとって「最悪が継続する」ということである。

アメリカの巨大石油企業であるエクソンモービルやシェブロンはすでに2017年には企業体質を改善して原油価格が40ドルから50ドルで利益を出せる体質となったのは2017年の四半期決算を見ても明らかだ。

しかし、ベネズエラの国営石油企業は非効率なまままったく改善されていない。このままでは、ベネズエラ政府には、もう打つ手はない。

インフレ率はさらに上昇し400%に跳ね上がっている。

ベネズエラの失業率は2014年の石油暴落から30%に跳ね上がっており、2017年の推計は31.43%なのだが、実質的には40%を超えていると言われている。



追い込まれたベネズエラ・マドゥロ大統領。ベネズエラはもう国家崩壊寸前であり、どうにもならないところにまで追い込まれてきている。

劣悪な状況になってしまっているベネズエラ国内


現在のベネズエラは、経済停滞と、物不足と、失業と、インフレが同時に起きているわけで、これは典型的な「スタグフレーション」と言える。

様々な局面の経済状況の中で、最悪の局面を示しているのが、この「スタグフレーション」であるのは言うまでもない。

少し考えればそれがどれほどひどい状況なのか想像できるはずだ。何しろ仕事がなくなって、モノもなくなって、かろうじて手に入るモノは今までの10倍も20倍も高い価格が付くのだ。(地獄に落ちたベネズエラ。インフレと食料不足と略奪の嵐に

手に入らないのは贅沢品のようなどうでもいいものではない。牛乳、米、肉、卵、野菜、果物、コーヒー、洗剤、トイレットペーパーのような、日々暮らす上で大切なものである。

ベネズエラでは新聞社や出版社も続々と廃刊に追い込まれているのだが、これは弾圧の結果そうなったわけではない。その前に印刷するための「紙」が手に入らなくなってしまったからである。

すでにベネズエラという国に見切りをつけて周辺国に脱出する国民も多く、2016年の時点で150万人以上もの国民がベネズエラから逃げ出したとも言われている。

中には、着の身着のまま、一文無しで逃げ出す国民もいると言われているが、逃げ出しているベネズエラ人の多くは富裕層である。大半のベネズエラ人は逃げ出す金も余裕もなく、国内にとどまるしかない。

仕事もなく、食べるモノもなく、金もないので、犯罪率も急上昇している。

中南米はもともと犯罪率が高い地域として知られているが、ベネズエラも例に漏れず、今では世界最悪と言われているホンジュラスを超えるのではないかと言うNGO団体もある。

ホンジュラスを超える治安悪化なら、世界最悪の部類であると言っても過言ではない。(行ったら殺される。手の付けられない無法地帯、ホンジュラス





ベネズエラで起きている抗議デモ。事態はどんどん最悪の方向に向かって突き進んでいる。

ニコラス・マドゥロ政権は、もう持たない


公務員や警察も困窮しているので汚職や賄賂が蔓延して、腐敗が広がっており、それがベネズエラの治安をより悪化させているとも言われている。

石油依存から脱却して、国内の産業を多角化するという政策は長期的な施策であり、急場をしのぐ政策にはなり得ない。

そもそもこの産業の多角化もベネズエラは難しいと言われている。なぜなら、ベネズエラは主要な産業を前チャベス大統領が次々と国有化してしまっていたからだ。

国有化して政府が価格統制しようとしていたのだが、これがベネズエラの産業を停滞させる原因となった。

ベネズエラが95%もの石油依存になってしまったのは、非効率な国営企業で企業の競争力が削がれたからである。

ベネズエラのチャベス大統領は2007年に石油事業を完全に国有化するため、アメリカのエクソンモービルを追い出して石油合弁資産を奪い取ってしまった。

そして、ベネズエラは石油価格の決済をドル建てを止めるべきだと2007年11月17日のOPEC(石油輸出国機構)で主張し、ドル通貨基軸からの脱却を訴えた。

それは、南米からアメリカを追い出し、中国やロシアと組むことによってアメリカの覇権を奪い取ろうとするチャベス前大統領の試みのひとつだった。

ベネズエラは反米国家としてロシアや中国やブラジルと共にアメリカ包囲網を作ろうとしていたのだ。

しかし2011年になるとチャベス大統領は癌になり、「自分が癌になったのはアメリカの陰謀だ」と叫びながら2013年に死亡し、ベネズエラ政府は石油暴落によって国家崩壊寸前にまで追い込まれる結末となった。

ニコラス・マドゥロ政権は、もう持たない。

2017年5月3日、ベネズエラの北部にあるアメリカの自治領プエルトリコが7兆8000億円の負債を抱えて破産している。

次の「終わり」がベネズエラであったとしても不思議ではない。




ニコラス・マドゥロ政権に抗議するデモ隊。ニコラス・マドゥロ政権は、もう持たない。本来は2015年に辞任すべきだったが、マドゥロ大統領は今も大統領の座を降りるのを拒絶している。



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