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ジェニー・エヴァンスという22歳のイギリス人の女性は東南アジアを回る冒険旅行に出た。数年かけて、可能な限りたくさんの旅をするスケジュールだった。

彼女はベトナムを訪れ、次にタイに入った。タイで彼女が辿り着いたのは、セックスとビーチとマリファナの楽園、パンガン島である。

かつてはサムイ島がこの手の欧米人(ファラン)を呼び寄せていたが、サムイ島に空港ができて普通の観光客が増えるようになると、ドラッグが好きなファランたちはサムイ島を避けてパンガン島に移るようになっていった。

そして今、パンガン島は「少しいけない冒険」を求めるファランたちの楽園となったのだった。

ジェニー・エヴァンスもまたパンガン島にやってきて、アドベンチャーを満喫していた。パンガン島にはたくさんの自然が残り、美しいビーチがあり山がある。彼女は島でレンタルバイクを借りてパンガンを巡った。

しかし、大変なことが起きた。

彼女はバイクで転倒し、右足にひどい傷を負った。膝から下が30センチ以上に渡って肉がえぐれ、筋肉がちぎれ、骨が剥き出しになるような凄まじいものだった。


このままでは、彼女は足を失う可能性がある


パンガン島には彼女の負った深い傷を治療する医療設備はなかったので、彼女はすぐに隣のサムイ島に移された。しかし、サムイ島でも彼女の負った傷の手術は難しいものだった。

問題が2つあった。

それは彼女が13歳から「クローン病」という持病を持っていることだ。これは原因不明の難病のひとつであり、根治治療法も存在しない病気である。

いったん発症すると口腔内から肛門までの消化器官のありとあらゆる場所に炎症を引き起こし、場合によっては大出血してしまうこともある。

彼女はこの病気のためにいったんイギリスに戻らなければならないのだが、それが足の怪我でできなくなった。

さらに通常の旅行保険で彼女の医療費をカバーすることができなかった。

彼女はイギリスに戻って急いでクローン病と事故の怪我の手術が緊急に必要だが、保険が効かないために帰国費等を含め10万ポンド(約1400万円)を工面しなければならない。

しかし、そんな金はどこにもなかった。彼女の両親はすぐにタイのサムイ島に向かって娘と面会したが、彼女はひどく怯え、そして激痛に苦しんでいた。

すでに彼女の足は感染症に晒されて危険な状態となっており、このままでは彼女は足を失う可能性があると両親は医師に説明された。

しかしジェニー・エヴァンスの両親も、10万ポンドを用意することができないでいる。

彼女の窮状を知った友人たちは、すぐにインターネットでクラウドファンディングを設定した。

クラウドファウンディングとはインターネットによる資金集めのことなのだが、事業を行う人たちや難病で莫大な治療費を必要とする人たちによって、最近よく利用されている。



彼女はバイクで転倒し、右足にひどい傷を負った。膝から下が30センチ以上に渡って肉がえぐれ、筋肉がちぎれ、骨が剥き出しになるような凄まじいものだった。

彼女の身に起きている悲劇はすべての人が経験する


ジェニー・エヴァンスの身に起きていることは緊急事態だが、まだ2万4412ポンドしか集まらない。

資金集めが間に合わなければ、彼女は足を切断しなければならないが、それだけでなく感染症が全身に回ったり、クローン病を発病したりすると、命の危険にもさらされる。

絶体絶命の危機とは、まさに今の彼女の状況を指す。

もし彼女に幸運が訪れ、無事にイギリスに帰国できて手術に成功したとしても、彼女の負った深い傷は間違いなく神経を傷つけているので普通に歩けるようになるかどうかは楽観視できないはずだ。

彼女のアドベンチャーは、バイク事故が奪ってしまった。

バイクは人間が道と一体化できる素晴らしい乗り物であるが、生身の人間が剥き出しのまま機械と一体化して猛烈なスピードで飛ばすのだから、いったん転倒すると大変なことになる。

スピードが増せば増ほどそれは危険極まりない乗り物となり、バイクによって多くの人が重篤な怪我をしたり、死んだりしているのは誰もが知っている。

細心の注意が必要だが、どんなに注意しても何ともならないのがバイク事故である。

たった1つの空き缶、ぬかるんだ道、カーブ、雨、風がライダーの命を奪う要因となる。熟練したライダーでさえも、不意に命を奪われるのである。

たまたま事故を起こした場所が病院の遠い場所だと、ジェニー・エヴァンスのように助かっても深刻な事態に巻き込まれるという事態もあり得る。

そういった意味で、彼女の身に起きている悲劇は、すべての人が経験する可能性のある悲劇であるとも言える。

そもそも、私も東南アジアから戻って来たばかりである。





たまたま事故を起こした場所が病院の遠い場所だと、ジェニー・エヴァンスのように助かっても深刻な事態に巻き込まれるという事態もあり得る。

旅行保険? そこにはこのように書かれている


ところで、私はカンボジアの首都プノンペンから戻ってきたばかりなのだが、プノンペンの道路事情は稀に見るひどさであるというのは初日から帰るその日の夜まで、ずっと感じてきたことだ。

「日本大使館の安全情報を見ると、カンボジアの自動車数当たりの死亡事故発生件数は日本と比較して100倍も死亡事故が発生している計算になる」と書いた。(廃墟ビルの荒廃と売春する女性に依存する心の荒廃(2)

この安全情報の詳細な内容はこちらで読むことができる。(「安全情報」~2015年中におけるカンボジア国内交通事故発生状況~

「死亡事故の90パーセント以上がオートバイ乗車時の事故で、死因の大多数がヘルメット未装着による脳挫傷」とそこには書かれている。

この日本大使館の安全情報を読まなくても、プノンペンに辿り着けば誰もが「これまマズい」ということに気付く。

プノンペンは大量のバイクが走っている都市だが、半分はヘルメットなどしていない。交通ルールも守らない。信号も少ないせいで、平気で割り込みも起きる。中にはスマートフォンを操りながら運転している若者もいる。

高齢者もバイクで飛ばしている。古いバイクは夜になってもヘッドライトが点かない。点けないのではなく、壊れて点かないのである。

あまりにも交通ルールの違反が多すぎて、取り締まる側も間に合わない状態である。いや、そもそも警察官自体が、ヘルメットをかぶっていなかったりすることもある。これでは日本の100倍の死亡事故が起きても不思議ではない。

このプノンペンでは多くのファランがレンタルバイクを借りてめちゃくちゃな交通事情の中を走り回っている。日本人もレンタルバイクでプノンペンを走っている人もいるはずだ。

多くの外国人は国際免許など持っていないまま、パスポートだけをレンタル屋に提示してバイクを借りているのだが、実は大きな危険がある。

ほとんどの人は旅行保険に入っており、バイクで怪我をしても保険で何とかなると思っている。

しかし、本当にそうだろうか。

日本の旅行保険は多くが「治療費用および傷害死亡・後遺障害の補償の対象」と謳っているのだが、多くの旅行者は小さな字で書かれた対象外の文章を読まない。そこにはこのように書かれているはずだ。


無免許・飲酒運転など正常な運転ができない状態での事故によるケガは、 支払いの対象となりません







プノンペンは大量のバイクが走っている都市だが、半分はヘルメットなどしていない。交通ルールも守らない。信号も少ないせいで、平気で割り込みも起きる。中にはスマートフォンを操りながら運転している若者もいる。



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