イギリスでイスラム過激派によるテロが多発しているのだが、こうしたテロが起きる背景にインターネットによる憎悪の扇動があるとイギリスのメイ首相は考えている。

2017年6月4日、メイ首相は「もう我慢の限界だ」として以下のように述べた。

「国内ではインターネットの過激主義を抑えるために全力を尽くさなければならない」「我が国は過激主義に対してあまりに寛容すぎる」

インターネットにはイスラム過激派による「殺せ、テロを起こせ、アラーはそれを望んでいる」という扇動が次々と書き込まれている。

そして、実際に欧州の各国に潜り込んでいる若いイスラム教徒がそれに触発されてテロを準備したり、計画したりして、最後に暴力的行為を実行している。

メイ首相は、今までこうした過激な扇動が野放しにされていて、フェイスブック、ツイッター、グーグル等の大手インターネット企業が扇動防止に手を尽くしていないと激しく批判した。

「インターネットとインターネットを使ったサービスを展開する大手企業は、まさにそれを提供している」


アンダーグラウンドは癌細胞のように広がった


かつてインターネットは、ユートピアのように見られていた時代もあった。

「そこでは見知らぬ人たちと簡単につながることができる。国を越えて友達を作ることもできる」

確かに、それは実現された。フェイスブックが台頭するようになってから、多くの人が本名をシステムに登録し、自分の日常をインターネットにアップするようになり、世界中からやってくる友達申請を受け入れるようになった。

しかし、こうした「健全なつながり」の陰でアンダーグラウンドは癌細胞のように広がっている。

人間には様々な性格の人、様々な立場の人がいる。人種も宗教も習慣も考え方もライフスタイルも多種多様だ。それぞれが「譲れないもの」を持ち合わせている。

人と人が簡単につながるようになったということは、「自分が譲れないもの」とは真っ向から対立する相手ともつながるようになったということでもある。

だから、インターネットではいずれは「つながらなくてもいい人間とつながった」ことによる対立や衝突が生まれるのは必至だった。

互いに譲れないものを持った者が討論しても対話が成り立つわけがない。相手を否定し、相手を罵り、相手を嘲笑し、相手を威嚇する。

保守的な考えを持つ人とリベラルな人が、自分たちの優位性を巡って対立する。違う人種同士で相手の人種を否定し合う。違う民族同士で歴史解釈や領土問題で主張し合う。あるいは自分の宗教を擁護し、相手の宗教を否定する。

いずれも「譲れないもの」なので、相手を容認することができない。相手が自分を否定したら、激しく憤ってこちらも相手を否定する。

結局は「つながった」ことによって、相手との意見の相違のために互いに強い言葉で相手をなじるようになっていき、やがては誹謗中傷の嵐となっていく。



イギリスでイスラム過激派によるテロが多発しているのだが、こうしたテロが起きる背景にインターネットによる憎悪の扇動があるとイギリスのメイ首相は考えている。

憎悪まみれのシステムを抱え込んでいるツイッター


イスラム過激派組織ISISのアブ・ムハンマド・アル・アドナニは、全世界のイスラム教徒に向けて次のように叫んだ。

「テロを引き起こすためには手段を選ぶな。爆弾でも、ナイフでも、銃弾でも、車でも、岩でも、あるいは自分の靴でも、拳でも、何でも使ってテロを起こせ。そして、十字軍(キリスト教徒)の人間たちを殺した上で自決しろ!」

ISISはこうした扇動をほぼ毎日のようにインターネット上で行っており、「アラーがそれを望んでいる。さあ、今すぐテロを引き起こせ」と、フェイスブックやツイッターや独自に立ち上げたブログで煽ってきた。

フェイスブックもツイッターも、こうした過激派のアカウントを次々と閉鎖しているのだが、どれだけ閉鎖してもまたすぐに新しいアカウントが立ち上げられる。

ツイッターのアカウントは誰でもすぐに新しく作れる。だから過激派を排除するのは不可能に近い。完全にイタチごっこになっている。

ツイッター社は高まる批判を受けて、2017年6月4日には「37万5000件以上のアカウントをテロ宣伝に関連した規約違反を理由に停止させた」と発表している。

しかし、それだけのアカウントを閉鎖しても、過激テロ組織の人間が新しいアカウントを作成することを拒めないのだから意味がない。

ツイッター社は事業をなかなか軌道に乗せることができずに赤字を垂れ流しており、今まで多くの企業がツイッターの買収を検討してきた。

名前が取り沙汰された企業は、アップル、グーグル、マイクロソフトから、ベライゾン、タイムワーナーと錚々たる巨大企業である。

ところが、すべての企業は最終的に買収から降りている。

ツイッターは憎悪が飛び交う空間である。それを買収したら一流企業が憎悪まみれのシステムを抱え込むことになる。システムに批判が高まると企業ブランドに傷がつく。

システムを検討した一流企業は、ツイッターの買収がメリットよりもデメリットの方が高いことに気付く。



イスラム過激派の宣伝の場だと皮肉られているツイッター。ツイッターのアカウントは誰でもすぐに新しく作れる。だから過激派を排除するのは不可能に近い。完全にイタチごっこになっている。

インターネットから剥き出しの暴力が追放されていく


こうした憎悪の扇動によって激しいテロが引き起こされて大勢の人たちが殺されるようになっているのだから、もはや事態は待ったなしの状況になっている。

折しも2016年からフェイクニュースがインターネットに蔓延するようになり、アメリカの大統領選挙さえもフェイクニュースによって番狂わせが起きるようになってきた。

「ヒラリー・クリントンが児童性愛者の人身売買のビジネスに関わっている」というようなフェイクニュースが怒濤のように流れて人々を動揺させた。

逆にドナルド・トランプは、自分自身の不利な真実の情報を「フェイクニュースだ」と頭ごなしに否定したりして、ニュースの真贋が混乱した。

こうしたフェイクニュースはフェイスブック内でリンクされて広がったり、グーグルが検索のトップに表示させたりして、今もまだ激しく批判され続けている。

こうしたフェイクニュースもまた政治的プロパガンダが大量に混じっており、敵対者を追い落とすための悪意と憎悪がたっぷりと詰まっている。

世界的に、インターネットの「憎悪の蔓延」をこれ以上放置できないというコンセンサスができあがりつつある。そうであるならば、これから起きるのは何か容易に想像できる。

これからはインターネットの規制がどんどん強まっていくのだ。政府による監視、注意、指導が為されていき、必然的に表現の自由が規制されることになる。

つまり、最終的にはインターネットから剥き出しの暴力が追放されていく流れになる。

暴力を表現する個人のアカウントもまた強制閉鎖されていくのは当然のことで、あからさまな暴力、剥き出しの暴力を扱うサイトも、いずれは規制の網にかかって閉鎖を余儀なくされることも考えられる。

いつ、どのような形でそれが実現するのかは誰も分からない。しかし、時代がその方向に走り始めようとしているわけで、今の形のままの表現が許されなくなるのは時間の問題だ。



世界的に、インターネットの「憎悪の蔓延」をこれ以上放置できないというコンセンサスができあがりつつある。そうであるならば、これから起きるのは何か容易に想像できる。これからはインターネットの規制がどんどん強まっていくのだ。



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