ミャンマーで地獄が出現している。イスラム少数民族ロヒンギャ族による衝突と弾圧の話だ。

仏教国ミャンマーで、隣国バングラデシュから流れて定着したロヒンギャ族はイスラム教徒である上に肌の色が黒く明らかに異質な民族であった。

2012年、西部ラカイン州でこのロヒンギャの若者がミャンマー人の女性をレイプしたことから端を発した対立と衝突はどんどんエスカレートして、政府が非常事態宣言を発令する騒ぎとなった。(ミャンマー非常事態宣言。宗教対立、レイプ報復、虐殺、放火

以後、対立は沈静化するどころかエスカレートする方向に進み、ミャンマー全土で激しいロヒンギャ排除の実力行使が進んでいくようになった。

この流れの中で、ロヒンギャ族は「イスラム教徒が差別されている」と外国に向けて宣伝し、国外から武装勢力をミャンマー国内に呼び寄せて対抗するようになった。そして、殺し合いが殺し合いを生む事態となっている。

2017年8月25日以後、再び西部ラカイン州でロヒンギャ族の武装組織とミャンマー人の衝突が激化し、治安当局とも激しい戦闘を繰り広げるようになっていった。


ミャンマーの中で憎悪がどこまでもエスカレート


ミャンマー人とロヒンギャ族は、すでに互いに深い民族憎悪と暴力にまみれた。もう和解は不可能だ。互いに相手を罵り合って憎悪を剥き出しにして対立し、実際に双方に死者を出している。

この憎悪はどこまでもエスカレートする。

ロヒンギャ族は「自分たちは差別されている、イスラム教徒が差別されている、ミャンマー人は差別主義者だ」と全世界に宣伝している。

グローバル・メディアもそれを取り上げてミャンマーで差別主義が台頭していると書く。それもまた温厚なミャンマー人を激怒させている。

別にミャンマー人は差別主義者でも何でもないし、信心深く根が優しい人が多い。伝統を守り、今も敬虔である。

その人たちをロヒンギャ族は全世界に向けて「差別主義者」と罵って、外部から武装組織を引き寄せて衝突を大規模にしているのでミャンマー人は怒り心頭に発している。

もっとも、ミャンマー軍もまた強硬で軍事政権時代からの名残りで少数民族に対する弾圧は激しく暴力的な側面も持つ。互いに一歩も引かない。

だから、暴力が暴力を呼ぶ展開となっており、ロヒンギャ族の武装組織はここ1ヶ月で400人の死者を出す事態と化した。

また、ミャンマー全土でロヒンギャ族の住む村などは焼き打ちにあって、多くが難民となって隣国に流れ出るようになっている。焼かれた家屋は2600棟にのぼると国連は推定している。

ロヒンギャ族は「ミャンマー人がロヒンギャ族を襲って我々の家屋を放火している」というのだが、ミャンマー軍はこれを真っ向から否定していて「ロヒンギャ族の武装組織が逆にロヒンギャ族の家屋に火を付けて回っている」と主張する。

なぜか。

「自分たちは差別されている、イスラム教徒が差別されている、ミャンマー人は差別主義者だ」と喧伝するためだとミャンマー軍は言う。

つまり、ロヒンギャ族は自分たちが被害者の側に回ってミャンマー政府を国連やグローバル・メディアを使って攻撃させ、さらに全世界の武装組織を呼び寄せるためにそうしているのだとミャンマー軍は主張している。

ロヒンギャ族とはまるで逆の見解である。

突き詰めれば、人種対立・宗教対立・領土対立だ


ロヒンギャ族はまたラカインの衝突で、「ロヒンギャ族は3日間で3000人殺された」と主張した。

これをロイターやローカル紙が記事にしているのだが、これについてもミャンマー軍は激しく否定して「ロヒンギャ族の流している意図的なフェイクニュースである」と断言している。

どちらが正しいのかは、誰にも分からない。

恐らくどちらも大規模衝突を自分たちの都合の良い解釈をして発表しているので、双方の発表が事実と違っていたとしてもまったく驚きではない。

ミャンマーで起きている出来事は数字を含めてすべて裏付けできないものであり、その真相はニュースを見ても分からない状況になってしまっている。

第三者の現地調査がないので、衝突の細かい経緯や死者数や双方の主張のどちらが正しいかを推し測ることはできない。

しかし、分かることもある。それは、ロヒンギャ族の排斥の問題が実際に起きており、大規模な衝突と対立と虐殺も発生しており、それが収束する気配はまったくなく、憎悪がより深まっているということだ。

そしてミャンマーのロヒンギャ族に対する問題というのは、突き詰めれば、人種対立・宗教対立・領土対立であるということに気付かなければならない。

これは、スリランカ国内で起きていたタミル人とシンハラ人の対立と同じものだ。(全世界が無関心。スリランカで起きた女性兵士皆殺しの現場

あるいは東ティモールで起きていたティモール人とインドネシア人の対立とまったく同じものだ。(東ティモールの、拷問やレイプで死んだ女性は闇に消された

それぞれの地区で人種対立・宗教対立・領土対立があって、そのどれもが血まみれの虐殺に向かっていた。

無理やりそれを融合させると対立と衝突が生まれる


ドナルド・トランプ大統領の登場で、アメリカでは再び白人と有色人種の人種対立、あるいはキリスト教徒とイスラム教徒の宗教対立が生まれている。

今までアメリカは人種差別は克服されたように思われていたが、実はそうではなかったことが露呈した。それは沈静化していただけで、融和したわけではなかったのである。

EU(欧州連合)でも、大量の移民・難民を受け入れるようになってから、国内で激しい反撥が起きて保守派が急激に台頭するようになった。

欧州に入り込んだ移民の多くはイスラム教徒であったので、国内で人種対立と共に宗教対立も生まれるようになっている。

「郷に入れば郷に従え」がうまくできないと対立と排斥が生まれ、それが差別意識につながり、それが民族憎悪につながり、最後には大規模衝突と化す。

EUでしばしば起きているイスラム過激派のテロは、ほとんどが現地の貧しい移民が過激思想に感化されて引き起こしているのだが、その根底にはうまく現地に溶け込めずに憎悪に飲まれた若者の存在がある。

結局のところ、最初にカネの流れをグローバル化して、次にモノの流れをグローバル化して、最後にヒトの流れをグローバル化しようとしたところで、グローバル化は問題を引き起こすことになった。

今まで違った人種・文化・宗教は大きく混じり合わなかったから問題を起こさなかっただけで、無理やりそれを融合させると対立と衝突が生まれるということを現代人は甘く見ていたのかもしれない。

それが世界のあちこちで起きており、先鋭化している。

そのような目でミャンマーのロヒンギャ族問題を見ると、これは決してミャンマーという国の地域だけで起きている「特殊な事件」ではないことが分かるはずだ。

人種対立・宗教対立・領土対立という人類を殺し合いに向かわせる社会現象がそこにあり、ミャンマーを覆い尽くしている。




ミャンマーのロヒンギャ族排斥に抗議デモをする人たちはアジア全土で広がっている。ミャンマーのロヒンギャ問題は、人種対立・宗教対立・領土対立という人類を殺し合いに向かわせる社会現象のすべてを持ち合わせている。



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