世の中には、どうしようもなく金にルーズな人間がいるのだが、こうした人間と関わると自分まで破滅の底に引きずられるというのはよく知られている。

「連帯保証人になるな」とはよく言われる。なぜ連帯保証人になってはいけないのか。それは、連帯保証人はとてつもなく不利だからである。

たとえ借りた本人に返済能力があっても、本人が返さなければ連帯保証人が払わなければならない。つまり、「連帯保証人になってくれ」と言われたら、その借金は言ってみればすべて自分の借金になる。

だから、連帯保証人になったことで人生が破滅した人は珍しくない。

日本弁護士連合会の統計では、扱う破産債務者の25%は「第三者の負債の肩代わりを原因として破産した」と述べている。自分の借金ではない。他人の借金で破産しているのだ。

気をつけなければならないのは連帯保証人だけではない。

日常で小さな金額を貸してくれと言って、小さくダラダラと借りる人もいれば、働かないで他人の生活費に寄生する人もいれば、普段の付き合いはないのに唐突に「必ず返すから」と金を借りてくる人もいる。

もちろん、ほとんど返ってこない。


取り戻そうとすると、よりダメージが大きくなる


「金を貸してくれ」と言われたら、きっぱりと関係を切れればいいのだが、人間関係のしがらみでなかなかそう簡単にいかない場合も多い。

小さいお金だからと思って1万円や2万円をずるずると貸している人もいる。

「これが最後だから」
「これは急な出費だったから」
「必ず後で返すから」

そのように言われて仕方なく貸しても返ってこなくて、返してもらおうとすると逆ギレされることもある。

本来は貸している方が立場が強い。しかし、借りた金をすべて使って一文無しになった人は、その時点で開き直れる。そうなると、借りている人の方が強くなる。

ここで関係を切ったら、今まで貸している金が返ってこなくなる。そう考えると、貸した金のために関係を切ることもできず、ズルズルと付き合うことも多い。

「貸した金が返ってこない」と、返せない人よりも深く悩んでいる人も多い。その場合はどうしたらいいのか。

個々の状況にもよるだろうが、ほとんどの場合は「あきらめるしかない」のが現状だ。「無い袖は振れない」からである。

本来であれば、貸す前に関係を切らなければならないのだが、過去に戻ってやり直せるわけではない。だから、「戻ってこない」という現実に気付いた時点で、貸した金をあきらめて相手との関係を断ち切らなければならない。

こうした「戻ってこない損失」のことを金融の専門用語で言うと「サンクコスト」と呼ぶ。"Sunk"というのは「沈む」という意味だが、海に財布を落として沈没(サンク)したイメージを浮かべて欲しい。

それは取り返すことができない損失だ。

サンクコストは取り戻そうとすると、よりダメージが大きくなる性質がある。

貸して返ってこない金はそれが3万円でも10万円でも100万円でも、もう戻ってこないとあきらめて、その時点で関係を断ち切るのが正解だ。



「戻ってこない損失」のことを金融の専門用語で言うと「サンクコスト」と呼ぶ。"Sunk"というのは「沈む」という意味だが、海に財布を落として沈没(サンク)したイメージを浮かべて欲しい。それは取り返すことができない損失だ。

今までかけた金と時間と労力を考えて切れない?


客観的に見ると、「後で返す」と言われて貸して返ってこない金は、もう何をどうしても戻ってこない確率の方が高い。覚書を書いておいても戻らない金は戻らない。口約束であったらなおのこと戻らない。

そうであれば、戻ってこないと判断した時点で、それは「戻ってこない損失=サンクコスト」であると理解し、金ごと人間関係も断ち切るのが正解だ。

しかし、世の中はそのようにケリをつけられる人の方が少ないのが実情だ。

なぜか。

実は、失ったのは金だけではないからだ。その人との長い付き合い、想い出、期待、未来のすべてを失う。

もし貸した金を取り戻そうとあれこれ動いていたり、考えていたり、時間をかけていたりすると、そうした自分の労力も無駄になる。

金を失うと同時に、今まで自分がそれにかけていた時間までもが無駄になることになり、だからこそ「もったいない」と感じて撤退することができなくなる。

あらゆる角度で検討して、「この人間関係は断ち切った方がいい」という結論が出ても、今までかけた金と時間と労力を考えるとズルズルと引きずってしまうことになる。

どうすればいいのか。

「戻ってこない損失=サンクコスト」に引きずられるというのは、過去に引きずられているということである。過去ばかりを見ている状態だ。

それが「取り返せない損失」であると分かったら、過去を見るのではなく、撤退するために関係を断ち切って、そこから新しい未来に目を向けるしかない。

貸した金と共に人間関係を断ち切る。失敗しない人間はひとりもいないのだから、失敗であると分かれば一刻も早く断ち切ってしまうのが重要だ。

サンクコストは、そこから教訓を得て未来に正しい判断を重ねることによって取り返すべきなのである。

あなたも、誰かに金を貸しているかもしれない


「正しい判断をする」の中には、「正しい人間と付き合ってそうでない人間は切る」という判断も含まれる。

悪意のある人間、生活観念のない人間、寄生者、他人を騙す人間、破滅的な人間、虚飾癖のある人間、裏社会の人間、ギャンブラー、ドラッグ依存者、チンピラ、ヒモ、ホスト……。

こうした人間は生き方自体に問題を抱えている。

だから、どれだけ外観が良くて優しく見えても、最終的には経済的に行き詰まることが多く、行き詰まった後は「金を貸してくれ」という話になることが多い。

それを拒絶して関係が切れれば問題ないのだが、しがらみができると関係が切れない可能性も高い。そうであれば、最初から避けておくに越したことはない。

トラブルは対処するよりも、最初から避ける方が楽だ。

私は長らくアンダーグラウンドに生きていたが、今も私が経済破綻しないで生き残っているというのは、実のところ「戻ってこない損失=サンクコスト」を生み出す人間関係を「意図的に作らなかった」からでもある。

また、アンダーグラウンドで「リスクのある取引をしなかった」からでもある。つまり、「トラブルに対処するより最初から避けた」から何とか今も普通に生きている。

裏のある男や女たちの多くは、社会の底辺で這い回って生きてきた人間たちだ。

彼らは、失うものが何もないところからくる胆力と、悪人に揉まれて生きていたことによる狡猾さを持ち合わせており、素人など赤ん坊の手をひねるように騙せる。

こんな人間たちに関わって金を貸して、それが戻ってくると思う方がどうかしている。彼らを手玉に取る能力がないのであれば、彼らに関わらないで生きるという判断は正しい判断のひとつである。

もちろん表社会で生きていても問題のある人間はたくさんいるわけで、最初から分かっていれば関わりは避けておくのが最も問題のない生き方だ。

万一、関わってしまったらサンクコストのことを思い出して欲しい。「取り返せない損失」であると分かったら、過去を見るのではなく、撤退するために関係を断ち切って、そこから新しい未来に目を向けるのだ。

あなたも今、誰かに金を貸しているかもしれない。それは戻ってくるだろうか?



あなたも今、誰かに金を貸しているかもしれない。それは戻ってくるだろうか?「取り返せない損失」であると分かったら、過去を見るのではなく、撤退するために関係を断ち切って、そこから新しい未来に目を向けるのだ。



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