2017年10月1日、アメリカ史上最悪の銃乱射事件を引き起こしたのは、テロリストでも軍人上がりの男でも何でもなかった。裕福な64歳の白人男性だった。(ラスベガスの史上最悪の銃乱射事件。しかし、次も必ずある

スティーブン・パドックは元会計士であり、不動産投資で儲けて悠々自適の生活をしていたと報道されている。すでに64歳なのだから、あとは趣味に没頭してラスベガスで慎ましく生きていけばいいはずだった。

自分の人生をいきなり終わらせる理由はどこにもない。

スティーブン・パドックはすでに死んでしまっているので、この大量殺戮の動機はまだつかめていない。

しかし、スティーブン・パドックの起こした大量殺戮は「計画殺人」であり、決して思いつきで行ったものではないのも確かだ。

大量の銃、爆薬の原料、改造銃、選び抜かれた現場、大量の人が集まる日時……。「大量殺戮をする」と強い決意と意思と実行力が備わっており、入念に準備されていた。

軍用の自動小銃で10分に渡って乱射するその狂気は、凄まじい殺意に満ち溢れていたと言っても過言ではない。


裏側では「莫大な借金」があったのだろうか?


ISIS(イスラム国)は数ヶ月前に改宗してテロを起こしたとも言っているが、今のところはまだ確証が得られていない。

もし、ISISに共鳴したとしても、やはり普通の生活をしていたはずのアメリカ人がなぜ共鳴したのかという謎が残る。

スティーブン・パドックは世を恨んでいたのだろうか。深い失意があったのだろうか。精神的な病気にかかっていたのだろうか。それとも、何らかの不治の病で余命が宣告されて「どうせ死ぬなら皆殺しだ」と思ったのだろうか。

私がぼんやりと思ったのは、もしかしたらスティーブン・パドックは裕福なように見えて、裏側では莫大な借金があったのではないか、ということだった。

スティーブン・パドックが裕福になったのは、「会計士の知識を活かした不動産投資で成功したから」だった。

しかし、この不動産投資というのは、自己資本のみで行われるものはほとんどなく、その多くは銀行からの莫大な借入金によって賄われる。

そのため、もしロケーションを間違ったり、建物に問題があったり、入居者が入らなかったり、トラブルが起きたりすると、その借入金によって首が絞まることが多い。

2000年代のアメリカで起きた不動産バブルと、2008年のリーマンショックによる不動産バブル崩壊は、貧困層と富裕層の両方を破綻させたのだが、その理由は違っている。

貧困層は無謀なローンを組んで借金が返せなくなって破綻した。一方で富裕層の方は、銀行から次から次へと金を借りて壮大な土地転がしをしていたのが回らなくなって破綻した。

自宅を買っても投資用に買っても、資金繰りでつまづくとどちらも破綻するのが不動産投資だ。

資金繰りが失敗すると、資産があるのに一瞬にして首が絞まる。そうだとするとスティーブン・パドックもまた不動産投資によって危機に落ちていたということもあり得る。



スティーブン・パドックの起こした大量殺戮は「計画殺人」であり、決して思いつきで行ったものではないのも確かだ。しかし、動機がまったく分からない。

まるっきり動機が分からないから憶測が流れる


スティーブン・パドックは一回のギャンブルに100万円単位を注ぎ込んでいたとも言われている。ギャンブルもまた資産を急激に減らし、負債を膨らませる要因となる。

いくら裕福であったとしても、超富裕層でもない限り一日に百万円単位で賭けをしていたら金はあっと言う間に尽きる。

スティーブン・パドックはフロリダにいたのだが、そこからラスベガスに引っ越して次第にギャンブルにのめり込んで依存症になっていったというのもあり得る話だ。

ギャンブル依存になって負けが込むと、その負債はうなぎ上りに増えていく。今までの数十年分の蓄えを一気に喪失させてしまう。

今まで持っていた資産、自分が必死になって蓄えていた資産が、つまらないギャンブルで吹き飛んだら自暴自棄になっても不思議ではない。

持っているものをすべて失って「人生終わり」になっていたのであれば、最後にすべてを破壊して死んでいこうという邪悪な欲望にとらわれることもあるかもしれない。

まだ大量殺戮を行った理由が分かっていないので、いろんな人がいろんな理由を推測しているのだが、私自身は「原因は金ではないのか?」と今も漠然と思っている。

もちろん、そうではない可能性もある。

誰かにマインドコントロールされたとか、実はスティーブン・パドックが犯人ではなかったとか、一連の陰謀論につながるような話も沸いて出てきている。

まるっきり動機が分からないから、陰謀論からフェイクニュースまでいろんなものが横行する。そのため、決定的な動機が発見されるまで話が二転三転しそうな展開だ。

真実が憶測に埋没して、結局何が真実だったのか分からないままうやむやに終わる危険性もあるし、まったく動機が分からないまま事件が忘れられてしまうかもしれない。

フェイクニュースまみれで真相が消えてしまう前に、決定的な動機が証拠と共に報じられるのを願っている。




では犯罪気質は遺伝していなかったのだろうか?


ところで、もうひとつこの事件で気になったことがある。

フェイクニュースと言えば、「スティーブン・パドックの父親がFBI最重要手配の銀行強盗だった」というのも、私はあまりにも出来すぎた話でフェイクニュースなのではないかと疑ってしまった。

これは全米のすべての報道局、新聞社が取り上げているので、さすがにフェイクニュースではなさそうだが、「凶悪犯罪者の息子がまた大量殺人の凶悪犯罪を起こした」というのであれば、それは多くの人を複雑な気持ちにさせたはずだ。

もし、それが事実なのであれば「犯罪気質は遺伝する」という明白な証拠のようになってしまうからである。

実は世間ではさんざん「差別だ」「でたらめだ」「悪意のある研究結果だ」と言われながら認められないものの、科学者の間では常識になりつつあるのが「犯罪気質は遺伝する」というタブーである。

今でも人道的な見地からこの見方は「表向き」には激しく否定されている。

科学者も、こんなことを真顔で言おうものなら「差別主義者だ」と糾弾されることになるので絶対に何も言わない。

しかし、「心のあり方」は遺伝する可能性がゼロではない。体力、容姿、身長、色盲、色弱、先天的肉体異常、すなわち肉体も、見た目も、病気も、いろんなものが遺伝する。

だから、タブーであったとしても、知能や気質も遺伝するという説は「まったくのでたらめ」というわけではないというのは私たちは経験則として知っている。

知能指数の高い両親からは知能指数の高い子供が生まれやすい。私たちは周囲を見回して、その事実に「何となく」気付くことでもある。

そうであれば逆のパターンもまた気付くわけで、知能の遺伝は指摘するのはタブーだが、全体的な傾向として「絶対ない」と否定する人もいない。

では「犯罪気質は遺伝する」というのはどうなのだろうか。これについては「遺伝する」と気軽に言ったら問題になるのは、犯罪者の子供は世の中にはたくさんいるからである。また100%遺伝するわけでもないからだ。

しかし、「大量殺戮を引き起こしたスティーブン・パドックの父親はFBI最重要手配の銀行強盗だった」という事実は、多くの人に「犯罪気質は遺伝するのか?」と漠然とでも思わしめてしまった。

この凶悪犯罪を引き起こした男の凶悪な父親の存在は、人々を複雑な気持ちにさせているのである。

銀行強盗というのは金を手っ取り早く手に入れるための一か八かのギャンブルである。ラスベガスのカジノも金を手っ取り早く手に入れるための一か八かのギャンブルである。

ギャンブル気質は遺伝していたと見ることができる。

では犯罪気質は遺伝していなかったのだろうか……。秋の夜は長い。じっくり考えてみて欲しい。




父親はFBI最重要手配の銀行強盗。そしてスティーブン・パドック自身はアメリカで最悪の事件を引き起こした犯罪者。これは多くの人に「犯罪気質は遺伝するのか?」と思わしめてしまった。



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