かつての売春地帯には、セックスと、アルコールと、ドラッグの3つが退廃に欠かせないものとして認識されていた。

そのどれもが肉体的な快楽を深めるものであり、享楽を追い求めるハイエナが心から愛して止まないものである。そして、この3つに倦んだ真夜中の退廃した男女が一息つくのに吸うのがタバコだった。

私の好きな女性たちはセックスを仕事にして、アルコールとドラッグとタバコをたしなみ、のめり込み、依存し、心の友にしていた。

こうしたものは夜の女たちの寿命を縮める悪癖であったのは確かだったが、女たちは気にも止めなかった。彼女たちの人生はもう最初からどうにもならなかったからだ。

アルコールに酔って絡みついてくる女たちの熱い身体、髪に染みついたタバコの匂い、そして強烈なマリファナの空気。そのすべてが私の人生を狂わせてしまった。

2006年頃、私は長く続いた荒淫と退廃の生活で体調を崩し、執拗なめまいや頭痛で食事も喉を通らなくなり、体力も聴力も低下し、堕落に浸っている場合ではなくなってしまった。

以後、私は半年や1年もかけて売春地帯に沈没するような気力を失ったが、それでもあの享楽と堕落の世界を忘れたわけではなかった。


マリファナに対する常識は急激に変わりつつある


私は自分がいた世界を離したくない。あの空気感をずっと自分のそばに置いておきたい。売春地帯は私の中では永遠に生き残り、色褪せることがないものだ。

だから、私はアルコールの企業に投資し、タバコの企業に投資していた。

幸運なことに、これらの企業は莫大な利益を生み出す驚異の収益力を持っていた。売春地帯に思い入れがなかったとしても、投資に相応しい存在でもあったのだ。

アルコールとタバコは両方とも合法的なドラッグである。私は自分の金をアルコールとタバコに投資することで、永遠にあの世界を自分に結びつけた。幸せだ。

しかし、ひとつだけ私自身が強い思い入れを持っているものが結びついていなかった。

それが、マリファナである。

もう東南アジアの売春地帯でもマリファナは駆逐されている。日本でもマリファナは違法だ。そのため、私がマリファナをのんびり吸える日はもう来ないかもしれない。

もちろん、マリファナは違法なので、投資できる企業もないはずだった。

しかし、今までの常識は変わりつつある。

アメリカでは州政府の財政が逼迫するにつれて「マリファナを解放して観光客を呼び寄せ、税収入を増やすのはどうか?」というアイデアが試されるようになっているのだ。

その背景には、1960年代ヒッピー時代の「マリファナへの郷愁」が根強くアメリカ人に残っていることや、「マリファナは駆逐しなければならないほど依存性のある危険なドラッグではない」という認識が強まったことがある。

どのみち、マリファナくらいで逮捕していたら、刑務所がいくらあっても足りないくらい、それはアンダーグラウンドで蔓延している。取り締まるだけ税金の無駄になる。

だから、マリファナを合法にする州が次々と生まれ、今やそれが巨大産業として育とうとしているのである。マリファナは表社会で受け入れられ、そしてビジネスとして注目されるようになった。

かくして、マリファナに対する常識は急激に変わりつつあるのだ。



マリファナを合法にする州が次々と生まれ、今やそれが巨大産業として育とうとしている。マリファナは表社会で受け入れられ、そしてビジネスとして注目されるようになった。

マリファナで酔わせる飲料を開発して提供する


2017年10月30日、いよいよ時代が大きく変わった。アメリカの大手アルコール企業である「コンステレーション・ブランズ」が先手を打った。

ビールの「コロナ」や「モデロ」、あるいはウォッカの「スヴェドカ」を所有するコンステレーションが、医療用大麻を栽培するカナダ企業キャノピー・グロースの株式を10%取得したのだ。

このコンステレーション・ブランズは日本人にはあまり馴染みのない企業だが、時価総額で言えば日産と同程度の巨大企業であり、フォーチュン500企業として認識されている。

フォーチュン500企業というのは、日本で言えば東証一部上場企業みたいな扱いである。アメリカでも有数の一流企業の一角を占めている。

私は「マールボロ」を販売するタバコ企業「アルトリア・グループ」が、真っ先にマリファナに手を出すのではないかと、ずっと注目していた。(嫌煙&愛煙は仲良く喧嘩しな。投資家だけが知るタバコと大麻「本当の味」=鈴木傾城

しかし、先に動いたのはタバコ企業ではなく、意外なことにアルコール企業の方だった。

コンステレーション・ブランズは、マリファナを紙タバコにして「吸わせる」のではなく、ドリンクとして「飲ませる」方向でマリファナ産業に参入したのである。

この買収によって、アルコールで酔わせる飲料ではなく、マリファナで酔わせる飲料を開発して提供することになることが予測されている。

マリファナ飲料は、遅くても2019年にはコンステレーションによって世の中に出回ることになるはずだとカナダ企業キャノピー・グロースの経営陣は話している。

この画期的なマリファナ飲料が発売されると、「酔う」というのは二種類の意味を持つかも知れない。アルコールで酔うか、マリファナで酔うかの二種類だ。



コンステレーション・ブランズが提供するアルコール飲料。ここに、マリファナ飲料が加わる可能性が指摘されている。2019年中に出てくるかもしれない。

マリファナは、すでに上場企業にまで到達したのだ


もし、仮にコンステレーション・ブランズのマリファナ飲料が成功したら、世界中の多くのビール会社がマリファナ飲料を提供することになるかもしれない。

たとえば、バドワイザーを所有するアンハイザー・ブッシュ・インベブ社や、ギネス・ビールを所有するディアジオ社が、ゆくゆくは進出してくることが考えられる。

こうした大手がマリファナ飲料を揃えると、それは間違いなく人類の新たな嗜好飲料になっているはずだ。

2019年にそれが受け入れられたら、さらに新しい動きも見えてくる。様子見をしていたタバコ企業もマリファナに対する需要に応えるために、一気に市場を取り込んでくる可能性があるからだ。

最初に取り組むのは、やはりアルトリア・グループが一番近いところにある。タバコ会社が「合法的」に、マリファナを販売するのである。

このような動きになるのかどうかは、先手を打ったコンステレーション・ブランズが成功するか否かにかかっている。マリファナの需要は高いので、それでトリップができるほど「酔える」のであれば、充分に勝算はある。

「マリファナは覚醒剤のようなドラッグとはまったく違う」という正確な情報を持っている日本人は少数派だ。いまだに大部分の日本人は「マリファナは危険な麻薬」みたいな意識で止まっている。

こうした日本人から見ると、アメリカの動きは信じられないことかもしれない。しかし、これが現にアメリカで起きていることである。

すでに「マリファナは違法なので、投資できる企業もない」というのは、2017年10月30日をもって過去の話となった。マリファナは、すでに上場企業にまで到達した。

もし、マリファナに関わりたければニューヨーク株式市場で「コンステレーション・ブランズ(STZ)」を買えばいいということになる。

これで私も、やっと売春地帯の空気感を投資対象として自分の身に引き寄せて愛おしく思うことが可能になった。まさか、こんな時代がくるとは思いもしなかったが、時代が変わるというのは、そういうことだ。



「マリファナは違法なので、投資できる企業もない」というのは、2017年10月30日をもって過去の話となった。マリファナは、すでに上場企業にまで到達した。



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