中国は漢民族ではない辺境国のウイグル人の地区を「新疆」だと言って強制支配している。

ウイグル人はイスラム教徒で独自の文化を擁しているのだが、長らく中国共産党と対立して莫大な死者を出してきた。

何度も何度も独立運動が起こされて、そのたびに中国は凄まじい強権を発動してこれを取り締まった。この歴史の中で、漢民族はウイグル人に憎悪されるようになっている。

こうした民族対立と歴史対立を続けながら中国がこの地区を完全に掌握したいと考えているのは、この地区こそが中国の一帯一路の要所となるからである。さらにこの地区には地下に膨大な資源が眠っている。

中国はこの地区を絶対に手放さない。しかし、中国が支配を強めれば強めるほどウイグル人の抵抗と中国憎悪は激しいものになって対立の根は深まっている。

そのため、中国はどうしたのか。ウイグル人の収入を増やして懐柔するのと同時に、ウイグル人を徹底的に監視するために超高度な監視システムを構築するようになった。

まさにジョージ・オーウェルの小説「一九八四年」に見られる国民徹底監視の「ビッグブラザー」がウイグルに現れた。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

ウイグル人はいかに中国に監視されているのか?


中国のウイグル人監視は常軌を逸するレベルにあると、ヒューマン・ ライツ・ウォッチは報告している。中国はありとあらゆる監視をウイグル人に課している。

ウイグル人は常にIDカードを携帯する義務がある。ウイグル人は長いヒゲを生やすことができない。ウイグル人はベールを着用することができない。

ウイグル人はウイグル文化を研究してはならない。ウイグル人は生体データを提出しなければならない。ウイグル人は指定の場所で教育を受けなければならない。

ウイグル人は指定の場所で医療を受けなければならない。ウイグル人は指定の場所に住まなければならない。ウイグル人はガソリンを買うには身分証明が必要だ。ウイグル人は電車に乗る時は検問を受けなければならない。

ウイグル人は日常のありとあらゆる行動に関して監視されるようになっている。

上記はほんの一例だ。ウイグル人は、ホテルでも、ショッピングモールでも、銀行でも検問が必要で、すべての行動は中国当局に監視され、掌握される。

ウイグル人もスマートフォンを使えるが、公安当局が求めたらこのスマートフォンの中身も公安が調べることを阻止してはならないことになっている。

新疆ウイグル自治区では、監視カメラが無数に設置され、さらに町の至る所に交番が建てられて公安がウイグル人を監視している。

少しでも中国政府に反発する態度をしたり、抗議したり、暗号ソフトを使っていたり、反中国のコンテンツを所持したりしていると、問答無用に拘束される。

いったん拘束されると、いつ出所できるのかまったく分からない。場合によっては「国家分裂罪」で死刑になる可能性もある。ウイグル人の研究者がウイグル文化を研究していたというだけで「国家分裂罪」で起訴されるのである。

インターネットはウイグルだけでなく中国全土が完全監視下にあって、見られるコンテンツも決まっており、匿名で何かを書き込むというのは事実上、不可能になっている。

人民は徹底的に弾圧され、監視される社会と化す


「中国が素晴らしい、中国は発展している、中国は平和的、次の時代は中国の時代だ、日本は中国を見習え」と、未だに中国を絶賛している人がいる。

しかし、中国が他国を侵略するのであれば、その国はどうなってしまうのか。

その答えがウイグルである。

人民は徹底的に弾圧され、監視され、いったん監視システムが構築されたら、もう二度と反政府的な言動をすることができなくなるのだ。

欧米や日本にとって技術革新や最先端技術というのは、自分たちの日常を豊かにするためのものだ。最先端技術は楽しみであり、喜びでもある。

ところが、中国にとって技術革新や最先端技術というのは、人民を効率的に監視し、弾圧し、異分子を炙り出すものなのである。人民にとって悪夢であり、恐怖である。

それを、中国はウイグルでやっているのだ。

こんな中で新疆ウイグル自治区に住みたいという人はいないはずだ。自分が監視され、下手な言動をしたら公安に拘束されるかもしれないような不自由極まりない場所に行きたいと思う人間はどうかしている。

中国政府がやっているのは、ウイグル人に対する明白な人権侵害であるのは間違いない。

ところが、この凄まじい人権侵害に対して抗議する国外の良識ある人は、「内政干渉だ」と中国政府から徹底的に抗議される。そして以後は「中国の敵」と認定されて、事あるごとに執拗な攻撃を受けることになる。

だから、欧米の「自称」人権主義のエスタブリッシュメントたちは中国に何も言わない。チベットでも激しい弾圧が繰り返されているが、人権主義だったバラック・オバマ前大統領でさえも中国市場のために何も言わなかった。

エスタブリッシュメントは口ではきれい事を言っているが、人権よりも金だったのである。




2009年に起きたウイグルの暴動。以後、中国は徹底的にウイグル人を弾圧・監視してきた。

中国が日本を支配したら何が起きるのかの事例


中国が民主化することは、中国共産党がこの国を支配している限りは絶対にない。

新疆ウイグル自治区やチベット自治区を見ても分かる通り、中国が民主化したら途端にこれらの国々は漢民族の支配から抜け出そうと独立運動を起こすからだ。

中国が民主化するというのは、中国がバラバラになるということと同じ意味なのである。

中国が激しい勢いで、それも国外からの批判をモノともせずに辺境国を徹底弾圧・徹底監視するのは、そうしないと国家が分裂してバラバラになってしまうからだ。

また、漢民族であってもすべての人民が中国共産党を支持しているわけではない。中国ではしばしば暴動が起きて、反政府運動も生まれるのだが、そのたびに中国政府は容赦なく弾圧してきた。

天安門事件では、1989年6月3日から4日の2日間で、中国政府は反政府運動をする人民を一気に3000人も殺したと最近になって香港紙は書いている。AFP通信では「少なくとも1万人」とある。

中国政府は自分たちに反対する人間は、容赦なく殺しまくる体質を内包しているのである。この体質が、チベット自治区や新疆ウイグル自治区で発揮されている。

中国は独裁国家であり、独裁である限り民主化はなく、民主化がないのだから自由もない。自由に政権批判などしていたら、次の日には拘束されるか死体になって発見される国だ。

こんな国が他国の技術を盗みまくって経済発展したからと言って、「中国は素晴らしい」とか「中国は次の超大国」だとか言って賛美している人の気が知れない。

中国のやり方、中国の体質、中国の徹底弾圧・徹底監視に危機感を抱けないのであれば、それはあまりにも想像力が足りないとしか言いようがない。

「騙した方よりも騙された方が悪い」という国を賛美したり褒めたりすることの危険性を、もっと真剣に考えるべきだ。

チベット自治区や新疆ウイグル自治区で起きている徹底弾圧・徹底監視は、中国が他国を支配したら何が起きるのかの事例として研究すべきであり、これは決して他人事ではない。(written by 鈴木傾城)


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チベット自治区や新疆ウイグル自治区で起きている徹底弾圧・徹底監視は、中国が日本を支配したら何が起きるのかの事例として研究すべきであり、これは決して他人事ではない。



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