2014年に久しぶりにシンガポールの売春地帯であるゲイランで何日か寝泊まりした。そこは売春地帯としての機能はどんどん縮小しているのが見て取れたのだが、相も変わらず続いていたのは闇バクチである。

かつて大陸から来た女たちが売春する小路だったところは、もう女たちは立っておらず、代わりに闇バクチが進出して男どもが集まって歓声や罵声を上げている。

地元のチンピラ風情の男が路上にテーブルと板きれを用意して、3個のサイコロを振り、目の合計が10以下か11以上かを賭ける。大か小かを賭けるので、この賭博の名前は「大小」と呼ぶ。

単純な賭博で進行は早い。テーブルにはそれぞれの男が現金をそのまま張っており、血走った目でサイコロの目を見つめて一瞬に賭けている。

シンガポールは華人が作り上げた国だが、国民はマレー系、インドネシア系、インド系と多国籍だ。しかし、路上の違法ギャンブルに興じているのは、そのほとんどが中国系であるのは興味深い。

誰でも参加できるのだが、熱くなっているのはやはり華人なのである。中国人は世界一ギャンブルが好きな国民であると言われているのだが、そんな気質が垣間見える。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

お堅いシンガポールだが人々はギャンブル漬けだ


このゲイランの路上で行われているギャンブルはもちろん違法なので、警察がやってくると路上の入口あたりにいた見張りが合図すると、一瞬にしてテーブル板が片付けられてギャンブルしていた男たちも散っていく。

合図があってから5秒もしないうちに、賭場は消失して何もない路地になるのである。テーブル板はペラペラのベニアなのだが、それは一瞬で片付けるためだったのだ。

警官が去ると、もちろんすぐに「賭場」が作られて、また何もなかったかのようにギャンブルが行われる。昼間から日が暮れるまで、ゲイランの路上では延々とそんなギャンブルが行われている。

負けた男は忌々しげに罵り声を上げて去っていく。勝った男はすっからかんになるまで続けるか、もしくは途中で切り上げてゲイランの奧に入っていく。

奧に行くとそこにはストリート売春をする女たちも待っているし、いくつもの売春宿があって周辺国から出稼ぎにやってきた女たちが男を誘う。

かくして、ギャンブルに勝った男たちの金は一瞬にして男から女へと移転し、勝った男もゲイランを出る時は一文無しになっている。

かつて、売春地帯ゲイランには雀荘もあちこちにあって、中をのぞくとやはり華人が麻雀で和気藹々とギャンブルしている姿を見ることができた。

日本の雀荘は男ばかりだが、ゲイランの雀荘は違う。比率で言うと、80%は華人の中年女性だった。

彼女たちが朝からギャンブルに燃えているのだから、いかに気合いが入っているのか分かろうものだ。建物の外にまで、牌を混ぜる時の音が聞こえてきた。

シンガポールにあるのは、このような違法ギャンブルばかりではない。シンガポールは世界に名だたるカジノ「リゾート・ワールドセントーサ」と「マリーナ・ベイ・サンズ」が存在する。

「マリーナ・ベイ・サンズ」はゲームテーブルが500台、スロット等のマシンが1300台も置かれている大規模カジノ場だ。外国人が大勢来ているのだが、もちろん現地のシンガポール人も集まっている。

シンガポールはお堅い国に見えるのだが、貧困層から富裕層までギャンブル漬けになっているのが分かる。




ゲイランの路上で行われている違法バクチ。そして、警察当局が本気を出して摘発したときの光景。

賭神(ゴッド・ギャンブラー)を信じる中国人


ギャンブルは、たとえ路上の10ドルの賭けでも高級ホテルの1000ドルの賭けでも、それを続けても定期収入にはならない。たまに勝つことがあっても、胴元が存在するギャンブルのほとんどは「勝てない」ようになっている。

中国人は「賭神(ゴッド・ギャンブラー)」みたいな人間がいることを信じている。そして、ギャンブルに熟練すれば自分が賭神になれるような錯覚を持っているが、もちろん賭神になれる人間はほとんどいない。

つまり、どんな大金を持っていても、ギャンブルにのめり込めばのめり込むほどカモになっていく。

それでも中国人がギャンブルを止められない気質を持っているのは、やはり金に対する執着心が人一倍強いところから来ていると言うしかない。

何年もかけてコツコツと貯めたなけなしの金を、一瞬のギャンブルのために一気に蕩尽してしまう男もいる。一瞬に賭ける。なぜなら、その一瞬で勝てば「大金持ち」になれるチャンスがあるからだ。

富裕層の中でもギャンブル狂いの男がいる。「もっと金が欲しい」「もっと金持ちになりたい」という欲望ではち切れそうになっており、そのためにリスクが計算できなくなってしまうのである。

シンガポールもカジノ国家になろうとしているが、カジノ国家と言えばアジアの本拠地はマカオである。

マカオのカジノ収入は2017年は3兆7000億円だったと言われているが、中国政府が「反腐敗運動」でマカオに行く人間を厳しく監視しているのに莫大な金額がマカオに落ちている。

最近の中国人の富裕層は反腐敗運動で摘発されるのを恐れてマカオを敬遠しているのだが、そのために彼らはシンガポールや、タイ、果てはカンボジアにまで足を伸ばして地元の華僑と共にギャンブルに精を出している。

中国の高級官僚や経営者の三大悪癖は「愛人・ギャンブル・マネーロンダリング」と言われるが、貧困層は「売春・ギャンブル・脱税」なのだから、上から下まで同じ気質である。

対象はめまぐるしく変化するが手法は一貫している


こうした中国人の賭博好きは株式市場にも現れる。2015年の中国株バブルとその崩壊を観察しても分かるが、中国人の株の買い方はその多くは「バクチ」である。

「優良企業を安い時に大量に買って長く保持する」ようなことは一切しない。ゲイランの路上賭博で行われている「大小」と同じだ。

「上がるか下がるか」の二者択一で燃え上がり、バブルになって「もっと上がる」と思ったら、全財産を集め、さらに親戚からも金を集め、ヤミ金からも金を借り、そして一瞬に向けて大勝負する。

勝ち上がったら「俺はゴッド・ギャンブラーだったのだ」と雄叫びを上げ、負ければビルの屋上から飛び降り自殺する。株でバクチをやっていたのが2015年の中国バブルの光景だった。

このバブルは2015年6月12日に弾け飛び、上海証券取引所A株は株式時価総額の3分の1が、たった1ヶ月で吹き飛んだ。

中国政府は2015年のバブル崩壊の後には、国民の不満をそらすために今度は不動産バブルを作り上げたが、この不動産バブルもまた中国人の投機癖によって値段が雲の上まで上がって止まらなかった。

中国政府がそれに規制をかけようとすると、中国人は仮想通貨に金の匂いを感じ取って、人民元を売り飛ばして猛烈にビットコインを買いまくるようになっていった。

ビットコインはマネーロンダリングや、人民元に対する不信から買われていると分析されるのだが、それだけではない。ギャンブルのためにもビットコインが買われているのである。

このビットコインが暴落したのは2018年1月16日のことだったが、その理由のひとつとして中国政府と人民銀行による「仮想通貨規制の示唆」があったのは間違いない。

確かに中国政府は人民元の価値が仮想通貨によって毀損するのを恐れていた面もあるだろうが、中国人の気質で止められないバブルを抑えたかったという面もあったはずだ。

カジノ、株式、不動産、ビットコイン……。

対象はめまぐるしく変化しているのだが、中国人のやり方は首尾一貫している。「上がる可能性に賭けて一気に勝負する」のである。当たれば大金持ち、外れれば一文無し。極端だが、それが中国人の成り上がり方法だ。(written by 鈴木傾城)


このサイトは鈴木傾城が運営しています。本文を他サイトへ無断転載する行為は固くお断りします。この記事の有料転載、もしくは記事のテーマに対する原稿依頼、その他の相談等はこちらにメールを下さい。




カジノ、株式、不動産、ビットコイン……。対象はめまぐるしく変化しているのだが、中国人のやり方は首尾一貫している。「上がる可能性に賭けて一気に勝負する」のである。当たれば大金持ち、外れれば一文無し。極端だが、それが中国人の成り上がり方法だ。


〓 関連記事























〓 この記事のツイッター投稿はこちらです



ツイッターで鈴木傾城をフォローして頂くと、執筆・更新状況などが総合的に分かります。