私たち日本人は清潔で安全な国に暮らしている。どこの都市も夜になっても歩けるし、強盗や殺人に怯えながら過ごす必要もない。

行政もしっかりしており、生ゴミが捨てられたままになっていることもない。交通機関も時間通り運行している。多くの日本人はこれが当たり前のように思っているのだが、世界は「当たり前」が通用しない国が多い。

国外の多くの都市は「あそこには行くな」と言われる危険地区があちこちに存在する。それは欧米先進国でも同じだ。ニューヨークでもパリでもロンドンでも「迂闊に入ってはいけない犯罪多発地帯」がある。

そこに入ると「脅され、盗まれ、レイプされ、殺されても仕方がない」と思われるような場所がある。

また都市全体が危険になって、「こんなところでは暮らせない」と言われる場所もある。

治安が著しく悪かったり、行政が麻痺していたり、インフラが破壊されていたり、医療が遅れていたり、教育が行き届いていなかったり、文化・環境が非近代的だったりすると、「ここでは暮らせない」ということになる。

世界的な分析機関である『エコノミスト・インテリジェンス・ユニット』は、そうした劣悪な都市をランク付けしたデータを出している。これをいくつかのメディアが取り上げているので、ここで紹介したい。「ここでは生き残れない」と言われる世界で最も生存率の低い10都市はどこだったのか?(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

最悪都市10位 キエフ(ウクライナ)




現在、ウクライナの都市キエフはヨーロッパで唯一「最悪都市」に選ばれている。ドネツィク州とルハーンシク州のドンバス地域では常に内戦の危機に晒されている中で、ウクライナ全体が経済悪化に見舞われ、キエフは治安が悪化している。

世界はもう「ウクライナ問題」を忘れてしまっているのだが、そんな中でキエフの都市環境はどんどん悪化している。ロシアはウクライナを離さない。強権を行使するプーチン大統領も再選された。ウクライナの政情不安はこれからも続く。


最悪都市9位 ドゥアラ(カメルーン)




ナイジェリア・中央アフリカ・コンゴに囲まれたアフリカの小国カメルーンは常に物資が不足しており、都市ドゥアラも物資不足が恒常化している。

そんな中で、医療機関は劣悪なまま放置されており、それがこの都市の「住みにくさ」を高めている。病気になっても医療が助けてくれるわけではない。それが最悪都市9位になった理由である。


最悪都市8位 ハラレ(ジンバブエ)




ジンバブエはムガベ長期独裁政権の腐敗と失政によって経済が徹底的に破壊された国として知られている。止まらない悪性インフレで兆を超える桁のついたジンバブエ・ドルは全世界で失政の象徴として語られていた。(ブラックアジア:ジンバブエが崩壊して、空前のインフレが起きた本当の理由

ムガベ時代は終わったが、国はすぐに立ち直るわけではない。首都ハラレもまた都市機能のすべてが劣化した都市として最悪都市8位に選ばれた。


最悪都市7位 カラチ(パキスタン)




あまり知られていないが、インドと別々に独立したイスラム国家パキスタンは限りなく失敗国家に近い国である。

この国もイスラム過激派が横行してしばしば爆弾テロも銃撃事件も起きている。ベナジール・ブットの暗殺は世界に衝撃を与えた。(ブラックアジア:ベナジール・ブット元大統領が爆死した凄惨な現場の一部始終

行政も機能しておらず、パキスタン最大の都市カラチはゴミにまみれてしまっている。インフラの破綻は都市生活をどんどん劣悪化させている。

最悪都市6位 アルジェ(アルジェリア)




日本人は「アルジェ」と聞くと何かロマンチックな場所をイメージするが現実社会のアルジェは最悪都市の筆頭として挙げられる場所だ。

在アルジェリア日本大使館はこのように書いている。「失業、低賃金、上下水・道路等社会インフラの不整備、住宅配分の不公正他様々な社会問題に対する若者を中心とする抗議活動も発生しており、各地においてデモ、道路封鎖、市役所等公的機関への抗議行動が行われています」

この文章がすべてを物語っている。


最悪都市5位 ポートモレスビー(パプア)




パプア・ニューギニアの首都ポートモレスビーは貧困と暴力に満ち溢れた貧困都市である。白昼から銀行強盗が起きたりするのが日常茶飯事の場所だ。

教育・文化も著しく劣っていると『エコノミスト・インテリジェンス・ユニット』は評しており、世界でも有数の「住みにくい都市」であると名指ししている。(ブラックアジア:「レイプが風土病」だと言われる国、パプア・ニューギニア

パプア・ニューギニアの貧困は解消できない。構造的な都市機能の劣化はこれからも続く。


最悪都市4位 ダッカ(バングラデシュ)




バングラデシュの首都ダッカは私が好きな都市のひとつでもあるが、そこで暮らすとなると覚悟がいる。(ブラックアジア:バングラデシュ(2)精神の壊れた女性が立つダッカの夜

都市機能は麻痺している。貧困スラムはあちこちに広がっている。治安も悪い。衛生観念も欠落している。警察も腐敗している。選挙が始まればいつも暴動が起きる。

バングラデシュとは、そういう国であり、ダッカはその象徴である。


最悪都市3位 ラゴス(ナイジェリア)




ナイジェリア最大の都市ラゴスはアフリカでも有数の人口を抱えた都市なのだが、交通は常に麻痺状態であり、莫大な人口を支えるインフラもとっくの昔にキャパシティをオーバーしており、改善の見込みはない。

そんなところにイスラム過激派「ボコハラム」が少女を使った連続テロを引き起こしたりしており、治安も改善しない。いつ自爆テロに巻き込まれるのか分からない。

ラゴスとは運が悪ければ一瞬で死ぬ都市だ。(ブラックアジア:少女爆弾。ボコ・ハラムに拉致された少女が自爆していく


最悪都市2位 トリポリ(リビア)




欧米は独裁者カダフィを嫌って強制的に排除したのだが、その結果起きたのはリビアの無法化と暴力化だった。(ブラックアジア:カダフィ大佐、撃つなと懇願するものの頭部を撃たれて死亡

国軍も警察も機能していない。民兵が銃を持って街を徘徊しており、民兵同士が銃撃戦を繰り返している。貧困による誘拐も日常茶飯事だ。今のリビアは暴力に満ち溢れており、まったく収束の糸口が見えない。


最悪都市1位 ダマスカス(シリア)




2011年からシリアは内戦状態になったのだが、今もなおシリアの破壊は続いており、かつては美しかったと評されているダマスカスも崩壊都市と化した。

アサド大統領は今もなお権力の座にいる。そして、アサド大統領を中心に、ロシアとアメリカが軍事介入しており、シリアの破壊はこれからも続く。

世界の多くの都市は安全ではないという事実


『エコノミスト・インテリジェンス・ユニット』の世界最悪の都市はあくまでもこの機関独自の指標で選んだランクであって、この順位通りに危険なわけではない。

スポットでみれば、中南米の都市はそれこそ戦場と化したシリア並みに危険な都市があちこちにある。

メキシコ、ベネズエラ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コロンビア、ブラジルの都市の多くは世界でも最悪の殺人発生率を誇っており、平穏な日常生活が突如として暴力にまみれる。

このように考えると、都市というのは人口が多い分だけ、経済崩壊・貧困・暴動・内戦が始まると、最も危険な場所になるというのが分かるはずだ。

日本の安全な都市に住んでいる私たちは「運が良かった」と言える。もっとも、いつまでこの運の良さが続くのかは分からないが……。



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