シリアを巡って危機が広がっている。シリアは2011年からアサド政権と反政府組織の間で激しい内戦が勃発するようになっており、その内戦は今も終わっていない。

アメリカの前オバマ政権はロシアが支援するアサド政権を激しく嫌っており、反政府武力組織に大量の武器を流し込んだのだが、それが裏目に出て2014年のISIS(イスラム国)のような狂気の超暴力集団を生み出した。

この暴力組織は2017年には急激に勢力を喪失していったのだが、その裏にはやはりアサド大統領を支援するロシアの影がある。ロシアがシリアを支援するのは、別にアサド大統領が好きだからではない。

ロシアはシリアに重要な軍事港「タルトゥース」を持っており、これを死守したいからでもある。逆にアメリカがシリア政権を倒したいのは、アサド政権を崩壊させてロシアの影響力を中東から一掃したいからでもある。

アサド大統領を巡って、シリアは泥沼の戦乱地区と化しており、もはや国土は崩壊して地球上で最も危険な地区と化した。超暴力集団であるISISの影に隠れて目立たなかったが、凶暴さで言えばアサド大統領も負けていない。

アサド大統領は自分に刃向かう反政府組織が潜む街を、丸ごと砲撃して破壊する人間でもある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。


シリア攻撃をめぐるアメリカとロシアの対立


アサド大統領は自国民に向けて、樽爆弾を多用しているのだが、それだけではない。本来であれば決して使ってはいけないはずの化学兵器も数十回に渡って使用している。

2018年4月7日もダマスカス近郊の反体制派支配地域・東グータ地区で化学兵器を使用した。

2017年にアサド大統領が化学兵器を使用した際、ドナルド・トランプ大統領は激怒して一気呵成に巡航ミサイル「トマホーク」を59発もシリアに向けて撃ち込むという事件があった。

しかし、アサド大統領は再び化学兵器を使ったのだ。

アメリカ・フランス・イギリスの諜報機関・軍事機関はすぐにこの情報をつかみ、トランプ大統領はアサド大統領を非難すると共に「この残虐行為の責任はアサド大統領を支援するウラジーミル・プーチンにある」と名指しでロシアを攻撃した。

アサド大統領はすぐさま「使っていない」と容疑を否定して、ロシアも「西側諸国の介入を正当化するための挑発行為だ」とアメリカに強く反論している。

しかし、アサド大統領が化学兵器を使用したというのは、自国の軍事機関から報告を受けたフランスのエマニュエル・マクロン大統領も国際社会に向けて正式に発表している。

イギリスのテリーザ・メイ首相も状況を受けてアメリカのトランプ大統領と電話会談を行っている。

この後トランプ大統領はシリア攻撃の検討に入ったことを発表した。「ミサイルがくる」とトランプ大統領は4月11日に攻撃を示唆した。12日にはいったん「今すぐかもしれないし、そうではないかもしれない」と言葉を濁した。

しかし、この言葉とは裏腹にアメリカは着々とミサイル発射の準備を整えており、翌日の13日、いよいよアメリカはイギリス・フランスと共同作戦でシリアの化学兵器関連施設3拠点をミサイル攻撃したのだった。

これに先だってドナルド・トランプ大統領はホワイトハウスでテレビ演説を行い「シリア・アサド政権の化学兵器施設に対する局所攻撃を命じた」と発表した。

フランスでもマクロン大統領が「ドゥーマで、多数の男性、女性、子どもたちが、化学兵器を使い虐殺されました。レッドライン(越えてはならない一線)を越えました。従って、私はフランス軍に軍事介入を命じました」とトランプ大統領と同じく武力攻撃を命じたことを世界に向けて発表している。

欧米とロシアの関係はもはや絶望的なまでの断絶


ドナルド・トランプ大統領はアサド大統領に対してこのように言っている。

「人間のやることではない。むしろ、化け物による犯罪だ」

「この犯罪者であるシリア大統領を支援するロシアもまた犯罪者である」と断定し、「罪のない男性や女性や子供の大量殺人に関わっていたいというのは、いったいどのような国なのか」と激しく糾弾している。

プーチン大統領も売り言葉に買い言葉で「今回の緊張激化は、国際関係のすべてのシステムに破壊的な影響を及ぼしている」として、アメリカがすべての責任だとトランプ大統領を攻撃した。

「歴史がすべてを判断するが、アメリカにはユーゴスラビア・イラク・リビアと血塗られた懲罰に対する重い責任が課されている」

さらにアナトリー・アントノフ駐米大使も「これは、あらかじめ計画済みのシナリオが実施されているのだ」とアメリカを批判した。

「またしても我々は脅されている。このような行動には代償が伴うと我々は警告していた。その責任の全てはアメリカ政府、イギリス政府、フランス政府にある」

アメリカとロシアは13日の攻撃の翌日に行われた国連安保理の緊急会合でも、激しく批判の応酬を繰り広げており、「戦争が始まる」とロシアは警告を発した。

ロシアがここで言っている戦争とはシリアの代理戦争という意味ではない。「第三次世界大戦」という意味だ。

さらに化学兵器の使用を批判するアメリカに対して、ロシア上院のコサチョフ国際問題委員長はこのように反論している。

「アメリカこそが大量の化学兵器の所有国であり、他国を非難する道徳的権利はない」

凄まじいまでの批判の応酬であり、欧米とロシアの関係はもはや絶望的なまでにズタズタに断絶したと見てもいい。

次の破壊は、私たち日本のすぐ側で起きるのか?


このまま第三次世界大戦に向かってなだれ込んでいくのだろうか。ドナルド・トランプ大統領は「何をするのか分からない大統領」なので、結論がどうなるのかは誰にも分からない。

ひとつ言えることはトランプ大統領はすべてにおいて対立を恐れないで突き進む大統領であるということだ。

そのため、今後はあちこちでこのような破壊と混乱が湧き上がっていくのは間違いない。次の混乱はどこに生まれるのか。

それはイランと北朝鮮かもしれない。

その中でも北朝鮮の攻撃は次第に濃厚になってきている。5月に行われる予定の米朝会談で事態が平行線を辿るようであれば、トランプ大統領はここでも軍事攻撃を躊躇することはない。

トランプ大統領は強硬派のジョン・ボルトン氏を大統領補佐官にしている。ボルトン氏はかねてから北朝鮮を「まったく信用できない国」「現政権は崩壊させるべき」と主張してきた人物である。

「北朝鮮が嘘をついているというのはどのようにして知るか。唇が動けば嘘だと分かる。彼らは真実を言うことはひとつもないから」とジョン・ボルトン氏は言う。

これほどの強硬派であるジョン・ボルトン氏を大統領補佐官にしたのを見ても分かる通り、トランプ大統領は本気で北朝鮮を叩き潰す方向に向かっている。

北朝鮮の金正恩は怯えており、慌てて中国の習近平と中朝会談を行って「体制を維持させてくれるのであれば核から手を引く」と発表して必死になって時間稼ぎを行っている。

北朝鮮の当面の戦略は「トランプ大統領が退陣するまで死んだフリをすること」だが、すでにアメリカは北朝鮮をどこかのタイミングで攻撃する決意は固めているように見受けられる。

だから私たちは注意してアメリカの動きを見つめるべきである。次の破壊は私たち日本のすぐ側で起きたとしても不思議ではないからだ。(written by 鈴木傾城)



トランプ大統領はすべてにおいて対立を恐れないで突き進む大統領であるということだ。そのため、今後はあちこちで破壊と混乱が湧き上がっていくのは間違いない。



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